第104回医師国家試験 C20(2010年)
正答:c
問題
人が倒れているとの通報で救急隊が出動した。救急隊の報告では、患者は60歳代の男性で、目立った外傷はなく、救急隊の到着時には既に心肺停止状態であった。救急救命士がバッグバルブマスクによる換気と胸骨圧迫とを行いながら搬入した。救急外来で気管挿管を行った。腹部が膨満していたため胃管を挿入したが、末梢静脈路を確保できなかった。心電図上心静止状態のため、アドレナリン投与が必要と考えられた。
アドレナリン投与の経路として最も適切なのはどれか。
a.皮下注射
b.筋肉注射
c.気管内投与
d.胃管内投与
e.心腔内投与
正答の理由
心静止では早期のアドレナリンが必要です。出題時点の2005年AHA指針は、静脈路を基本に、取れなければ骨髄路(Class IIa)とし、どちらも確保できないときに気管内投与を認めています。骨髄路は選択肢になく、気管挿管済みで末梢静脈路が取れない本例では、選択肢の中では気管内投与が最も適切です。ただし気管内投与は同量の血管内投与より血中濃度が低く、一過性のβ作用で不利に働く可能性も動物研究で示されています。2010年版でも静脈路・骨髄路が取れない場合の代替(Class IIb)で、実臨床では骨髄路を先に検討します。公式正答はcです。
各選択肢の検討
a.皮下注射。誤り。2005年版と2010年版のAHA指針が心停止の薬剤経路として挙げるのは静脈路・骨髄路と、その代替の気管内で、皮下注射は含まれません。
b.筋肉注射。誤り。同じく指針の心停止時の経路に含まれません。標準はアドレナリン1 mgを静脈内または骨髄内に3〜5分ごとに投与する方法です。
c.気管内投与。正しい(選択肢の中で)。挿管済みなら投与でき、アドレナリンは気管から吸収されます。用量は静脈内の2〜2.5倍が一般的で(2〜2.5 mg)、水または生理食塩水で5〜10 mLに希釈して注入します。最適量は不明で、静脈路・骨髄路より効果は不確実です。
d.胃管内投与。誤り。挿入済みで使えそうに見えますが、2005年版と2010年版の指針に心停止時の薬剤経路としての記載はありません。
e.心腔内投与。誤り。2005年版の薬剤経路の節にあるのは末梢・中心静脈路、骨髄路、気管内で、心腔内は挙げられていません。2010年版の本文でも同様です。
覚えるポイント
心停止の薬剤経路は静脈路・骨髄路が基本。気管内投与は両方取れないときの代替で、効果は不確実。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第104回医師国家試験問題および正答
- Part 7.2: Management of Cardiac Arrest. Circulation 2005;112:IV-58-IV-66(2005 AHA Guidelines、Internet Archive保存版)
- Part 8: Adult Advanced Cardiovascular Life Support: 2010 American Heart Association Guidelines(Internet Archive保存版)
- Cardiopulmonary Resuscitation (CPR) in Adults – MSD Manual Professional Edition
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。