第104回医師国家試験 B20(2010年)
正答:e
問題
妊娠、出産および育児について正しいのはどれか。
a.帝王切開には夫の同意が必要である。
b.妊娠 30 週の人工早産は母体保護法による。
c.児の救命処置は保護者の同意が必要である。
d.人工栄養の開始は保護者の同意が必要である。
e.人工妊娠中絶は母体保護法による指定医師が実施する。
正答の理由
母体保護法第14条は、都道府県医師会が指定する医師(指定医師)が、要件を満たす場合に本人および配偶者の同意を得て人工妊娠中絶を行えると定めています。法が定める配偶者同意は不妊手術と人工妊娠中絶についてのもので、他の処置にそのまま広げられません。公式正答はeです。第2条・第3条・第14条は、現行版と出題前年(2009年初め)の法令データの両方で同じ条番号と内容を確認しました。
各選択肢の検討
a.帝王切開には夫の同意が必要である。誤り。母体保護法が配偶者の同意を定めるのは不妊手術(第3条)と人工妊娠中絶(第14条)で、同法に帝王切開の規定は見当たりません。帝王切開は母体と児のための医療行為で、判断能力がある限り同意の主体は本人です。夫への説明は実務上の配慮です。
b.妊娠 30 週の人工早産は母体保護法による。誤り。法の人工妊娠中絶は、胎児が母体外で生命を保続できない時期に行うものと定義され、その時期は平成3年から通常満22週未満とされています(2003年の文献概要で確認)。30週はこの範囲外で、同文献は母体の生命の危険を避ける22週以降の人工早産を、緊急避難行為として同法の中絶と分けて述べています。
c.児の救命処置は保護者の同意が必要である。誤り。未成年では代理人の同意を求める法域もありますが、リスボン宣言は、代理人が得られず介入が緊急に必要なときは同意を推定してよいと述べています。これは世界医師会の宣言で日本の条文ではありませんが、救命処置は同意取得を理由に遅らせません。
d.人工栄養の開始は保護者の同意が必要である。誤り。人工栄養は母乳が不足する場合などに選ばれる通常の栄養法で、開始に保護者の同意を要件と定める規定は、確認した法令には見当たりません。実際には、保護者に説明し相談しながら進めます。
e.人工妊娠中絶は母体保護法による指定医師が実施する。正しい。第14条のとおり、人工妊娠中絶を行えるのは都道府県医師会の指定する指定医師です。
覚えるポイント
人工妊娠中絶は指定医師が通常満22週未満で実施し、本人と配偶者の同意が要件。配偶者同意を帝王切開などへ拡大しない。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第104回医師国家試験問題および正答
- 母体保護法
- 母体保護法(2009年2月時点の法令データ提供システム、Internet Archive)
- 人工妊娠中絶手術の実際(助産雑誌 57巻3号)
- WMA Declaration of Lisbon on the Rights of the Patient
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。