第104回医師国家試験 A59(2010年)
正答:a
問題
73歳の男性。肺炎でICUに入院した。身体的な経過は良好であったが、入院5日目から、夜になると点滴を外して暴れようとする。看護師がベッドに戻そうとすると、「ここはどこか」、「なぜ妻はいないのか」と興奮することもあった。日中は入院治療を受けていることをよく理解しており、夜間のことを覚えていない。
精神症状への対応として適切なのはどれか。
a.一般病棟に移す。
b.家族の面会を制限する。
c.夜間、部屋を明るくする。
d.夜間、予防的に身体を拘束する。
e.昼寝をしてもらい睡眠時間を保つ。
正答の理由
夜間に増悪する見当識障害と興奮があり、日中には回復して夜のことを覚えていないので、せん妄を考えます。ICUへの長期滞在はせん妄の危険因子で、身体の経過が良好なら一般病棟へ移すことは環境を整える対応になるので、公式正答はaです。ただし、MSDが述べているのはICU長期滞在が危険因子であるという点までで、移床でせん妄が改善するという直接の記載は確認していません。実臨床では移床だけでなく、感染・低酸素・脱水・薬剤などの原因の再確認、見当識の補助、睡眠の確保をあわせて行います。
各選択肢の検討
a.一般病棟に移す。正しい。ICUの長期滞在はせん妄の危険因子です。全身状態が良好なら、ICUを離れることで誘因を減らす効果が期待できます。
b.家族の面会を制限する。誤り。家族による安心の提供と見当識の補助はせん妄に役立つので、制限は逆効果です。
c.夜間、部屋を明るくする。公式上は誤り。睡眠と覚醒のリズムを崩すためです。ただし、MSDは夜間の感覚刺激の低下も誘因に挙げ、落ち着いて適度に明るい環境を勧めています。部屋全体を明るくするのは避けても、暗すぎない環境への配慮は必要です。
d.夜間、予防的に身体を拘束する。誤り。MSDは身体拘束をできる限り避けるとしています。自傷や他害を防ぐ必要がある場合に限って、訓練を受けた職員が行うものです。
e.昼寝をしてもらい睡眠時間を保つ。誤り。日中の覚醒を促さないと昼夜のリズムがさらに崩れ、夜間の症状を悪化させるおそれがあります。
覚えるポイント
ICUせん妄は原因検索に加え、昼夜のリズムと安心を整える環境調整が基本で、予防的拘束はしない。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。