解離性(転換性)障害の概念|第104回医師国家試験A15

第104回医師国家試験 A15(2010年)

正答:c

問題

解離性〈転換性〉障害について誤っているのはどれか。

a.多重人格が含まれる。

b.トランス状態が含まれる。

c.パニック障害がしばしば併存する。

d.解離性遁走〈フーグ〉では解離性健忘を伴う。

e.精神分析学的には疾病利得が根底に存在する。

正答の理由

ICD-10のF44には解離性健忘、遁走、トランス・憑依障害、多重人格などが含まれ、誤りを選ぶ問題の公式正答はcです。ただしcを医学的に誤りと言い切るのは難しい点に注意します。解離と不安障害の併存を整理した総説には、ドイツの女性を対象に解離性同一症の72.7%、特定不能の解離性障害の57.1%にパニック症候群を認めた報告が載っています。したがって「併存しない」とは言えず、この肢は2010年の出題上、F44の構成要素や古典的な説明であるa・b・d・eと分けて選ばせたものとして理解します。

各選択肢の検討

a.多重人格が含まれる。正しい記述。ICD-10ではF44.8に含まれ、現在の解離性同一症に相当します。

b.トランス状態が含まれる。正しい記述。F44.3のトランスおよび憑依障害で、宗教的・文化的に認められる状況の外で不随意に起きるものに限られます。

c.パニック障害がしばしば併存する。誤り(公式正答)。パニック障害はF41.0の不安障害で、解離性障害の分類には含まれません。ただし解離性障害では不安の合併がよくあり、高い併存率の報告もあるので、医学的に併存を否定する趣旨で覚えないようにします。

d.解離性遁走〈フーグ〉では解離性健忘を伴う。正しい記述。F44.1は解離性健忘のすべての特徴に、日常の範囲を超えた目的のある移動が加わったものです。

e.精神分析学的には疾病利得が根底に存在する。正しい記述。Freudの転換の考え方では、症状が葛藤や耐え難い情動を和らげること(一次利得)と、症状によって責任や状況から逃れられること(二次利得)を想定します。実証の裏づけとは別に、精神分析学の説明として正しい内容です。

覚えるポイント

解離性障害は健忘、遁走、トランス、多重人格を含む。遁走は解離性健忘+移動。パニック障害は分類上は不安障害だが、併存の報告はある。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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