第103回医師国家試験 A28(2009年)
正答:d
問題
19歳の女性。半年前から出現した右眼の視力低下と1週前から続く易疲労感とを主訴に来院した。意識レベルはJCS Ⅰ-3。身長162 cm、体重47 kg。体温36.2 ℃。脈拍72/分、整。血圧100/64 mmHg。頭部造影MRIのT1強調冠状断像(別冊No. 6A)と矢状断像(別冊No. 6B)とを別に示す。
認められるのはどれか。
a.外眼筋麻痺
b.味覚障害
c.片麻痺
d.尿崩症
e.難聴


正答の理由
MRIではトルコ鞍の上方に造影される腫瘤があり、視交叉・視床下部・下垂体柄に近い領域にあります。右眼の視力低下は視神経・視交叉の圧迫で説明でき、易疲労感や低めの血圧、意識レベルの軽い低下は下垂体機能低下などの内分泌障害も疑わせますが、本文だけでは断定できません。この部位の腫瘍で起こりやすい症状が尿崩症で、下垂体柄の障害によりバソプレシンが不足します。若年者の鑑別には胚細胞腫と頭蓋咽頭腫があります。小児の鞍上部胚細胞腫では尿崩症が70〜90%にみられ、最も多い初発症状とされます。頭蓋咽頭腫も鞍上部に生じ、多くは充実部と嚢胞部をもちます。画像だけで組織型は確定できません。公式正答はdです。
画像の見方
No.6Aでは蝶形骨洞の上方、トルコ鞍の上の正中に腫瘤があり、上部は強く造影され、下部は造影が弱い低信号です。両側の海綿静脈洞への明らかな進展や、側脳室の大きな変形はありません。No.6Bでは同じ腫瘤が鞍上部から第三脳室底の方向へ広がり、造影される充実部分と造影されない嚢胞様の部分が混在します。腫瘤の下のトルコ鞍内に帯状の強い造影域があり、正常下垂体の可能性があります。視交叉の圧排の程度や下垂体柄との境界は、この画像だけでは断定しません。
各選択肢の検討
a.外眼筋麻痺。誤り。眼球運動の神経が通る海綿静脈洞へ広がれば起こり得ますが、この画像では腫瘤は正中の鞍上部にあり、海綿静脈洞への進展は目立ちません。
b.味覚障害。誤り。味覚は顔面神経などの経路で、鞍上部の腫瘤の症状として典型的ではありません。
c.片麻痺。誤り。錐体路の障害で起こる症状で、この部位の正中の腫瘤の典型ではありません。
d.尿崩症。正しい。下垂体柄・視床下部の障害でバソプレシンが不足し、多尿と口渇が出ます。
e.難聴。誤り。聴神経の障害で起こる症状で、小脳橋角部の病変などで考えます。
覚えるポイント
鞍上部の腫瘤は視力低下+尿崩症+下垂体機能低下。若年者では胚細胞腫や頭蓋咽頭腫を考える。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第103回医師国家試験問題および正答
- Childhood Central Nervous System Germ Cell Tumors Treatment (PDQ®) – NCI
- Childhood Craniopharyngioma Treatment (PDQ®) – NCI
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。