ロッキングを伴う膝関節損傷|第102回医師国家試験I53

第102回医師国家試験 I53(2008年)

正答:a

問題

44歳の男性。右膝の疼痛と腫脹とを主訴に来院した。2日前にテニスの試合で右膝をひねってから疼痛と腫脹とが出現した。初診時は30°屈曲位で自動伸展不能であったが、診察で膝を動かしているうちに伸展できるようになった。膝関節単純MRIのT1強調矢状断像とT2*強調矢状断像(別冊No. 8A、B)とを別に示す。

考えられるのはどれか。

a.半月板損傷

b.骨軟骨骨折

c.後十字靱帯損傷

d.前十字靱帯損傷

e.離断性骨軟骨炎

別冊No. 8A 膝関節単純MRIのT1強調矢状断像。顆間窩で低信号の帯状構造が2本並んでみえる。
別冊No. 8A / 出典:厚生労働省・第102回I別冊(原本の該当ページ)
別冊No. 8B 膝関節単純MRIのT2*強調矢状断像。大腿骨顆部の輪郭に沿って線状の高信号がみられる。
別冊No. 8B / 出典:厚生労働省・第102回I別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

膝をひねった後に疼痛と腫脹が出現し、屈曲位から自動的に伸ばせない、しかし動かしているうちに伸展できるようになったという経過は、膝が途中で動かなくなるロッキングとその解除です。確認した資料では、半月板を損傷すると屈伸の際に痛みやひっかかりを自覚し、ひどい場合には膝が動かせなくなるロッキングを生じ、損傷形態にはバケツ柄状断裂があると記載されています。T1強調矢状断像では顆間窩のレベルに低信号の帯状構造が2本みえますが、確認した資料では顆間窩には通常前十字靱帯と後十字靱帯の2つの構造があり、それ以外の第3の構造物があってはじめて異常(転位した半月板断片の可能性が最も高い)とされています。本写真で2本を超える構造物を分離して示すことはできないため、画像だけで転位断片を証明することはできません。診断の決め手はロッキングとその解除という経過で、公式正答はaです。

画像の見方

写真A(T1強調矢状断像)は膝関節の矢状断で、左に膝蓋骨、中央に大腿骨、下に脛骨が描出される。顆間窩のレベルで、後十字靱帯と考えられる上方に凸の低信号の帯があり、そのすぐ前下方にもう1本の低信号の帯状構造が斜めに走り、2本が並んでみえる。写真B(T2*強調矢状断像)は骨髄が全体に低信号で、大腿骨顆部の輪郭に沿って線状の高信号が連なり、関節液の貯留が示唆される。骨内に広範な信号異常や関節面の陥凹は指摘できない。写真の解像度では半月板そのものの形態異常を直接確認することはできない。

各選択肢の検討

a.半月板損傷。正しい。ロッキングとその解除という経過に最もよく合います。確認した資料では、ロッキングは半月板損傷で膝が動かせなくなる状態として挙げられ、損傷形態のひとつにバケツ柄状断裂(転位した縦断裂)があるとされています。

b.骨軟骨骨折。誤り。T2*強調像で骨内に広範な信号異常や関節面の陥凹・遊離骨片を示す所見は指摘できません。

c.後十字靱帯損傷。誤り。顆間窩にみえる低信号の帯のうち、上方のものは連続性が保たれた後十字靱帯と考えられ、断裂を示す所見はありません。

d.前十字靱帯損傷。誤り。前十字靱帯の断裂を示す所見は本写真では指摘できず、ロッキングという症状も半月板断片の嵌頓のほうがよく説明します。

e.離断性骨軟骨炎。誤り。大腿骨顆部の軟骨下骨に透亮像や遊離骨軟骨片を示す所見はなく、ふつうはより若年者に緩徐に発症します。

覚えるポイント

受傷後に膝が伸びなくなるロッキングは、転位した半月板断片(バケツ柄状断裂)の嵌頓を疑う。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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