外傷後の内頸動脈海綿静脈洞瘻の治療|第102回医師国家試験I46

第102回医師国家試験 I46(2008年)

正答:e

問題

82歳の女性。交通外傷で搬入された。入院46日後、右眼の突出に気付き、右眼奥でシューシューと音がすると訴えた。意識は清明。右前頭部で拍動性雑音を聴取する。右眼強膜の血管怒張を認める。両眼部の写真(別冊No. 4A、B)と右内頸動脈造影側面像(別冊No. 4C)とを別に示す。

治療として適切なのはどれか。

a.副腎皮質ステロイド薬点眼

b.甲状腺ホルモン薬投与

c.抗けいれん薬投与

d.放射線治療

e.瘻孔塞栓術

別冊No. 4A 正面視を指示したときの両眼部写真。向かって左(患者右)の眼は眼瞼が腫れて閉じており、向かって右(患者左)の眼は開いている。
別冊No. 4A / 出典:厚生労働省・第102回I別冊(原本の該当ページ)
別冊No. 4B 強制開瞼時の両眼部写真。患者右眼の眼瞼は腫脹し、開瞼すると眼球結膜が赤く充血している。
別冊No. 4B / 出典:厚生労働省・第102回I別冊(原本の該当ページ)
別冊No. 4C 右内頸動脈造影側面像。海綿静脈洞部に続いて太い管状構造が動脈相で濃く造影され、前上方へ伸びる。
別冊No. 4C / 出典:厚生労働省・第102回I別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

外傷の約1か月半後に右眼突出、自覚的な拍動性雑音(シューシューという音)、他覚的な拍動性雑音、眼球結膜・強膜の血管怒張が出現しています。右内頸動脈造影側面像では海綿静脈洞部から前上方へ向かう太い管状構造が動脈相で濃く造影されています。外傷後に生じた直接型の内頸動脈海綿静脈洞瘻として矛盾しません。確認した資料では、直接型の海綿静脈洞瘻と確認されれば第一選択は血管内治療で、離脱式バルーン・コイル・液体塞栓物質などを用いて瘻孔を閉塞すると記載されています。したがって瘻孔塞栓術が適切で、公式正答はeです。

画像の見方

写真A(正面視指示時)では、向かって左すなわち患者の右眼は上眼瞼が腫脹して閉じており、向かって右の左眼は開いている。写真B(強制開瞼時)では患者右眼の眼瞼が腫脹し、開瞼すると眼球結膜・強膜が赤く充血している。左眼にはこれらの所見がない。写真C(右内頸動脈造影側面像)では、頭蓋底部の内頸動脈に続いて太く蛇行した血管構造が動脈相で濃く造影され、画面の前上方へ伸びる管状の血管がみられる。脳実質を栄養する動脈の末梢枝の描出は乏しい。画像のみからは短絡部位の正確な位置やこの管状構造が上眼静脈であるとまでは断定できない。

各選択肢の検討

a.副腎皮質ステロイド薬点眼。誤り。結膜充血や眼球突出の原因は動静脈短絡による眼静脈のうっ滞であり、点眼薬で短絡を解消することはできません。

b.甲状腺ホルモン薬投与。誤り。眼球突出をきたす甲状腺眼症はBasedow病に伴う浸潤性眼症であり、本例は外傷を契機に発症し拍動性雑音を伴う点が異なります。甲状腺ホルモン薬は甲状腺眼症の治療でもありません。

c.抗けいれん薬投与。誤り。けいれんの記載はなく、短絡そのものを治療しません。

d.放射線治療。誤り。確認した資料では定位放射線治療は硬膜型の海綿静脈洞瘻で血管内治療が困難または不成功のときの選択肢とされ、効果発現まで数か月かかるため急性の視機能・神経症状の悪化が懸念される例には不適切とされています。本例のような外傷後の直接型の第一選択ではありません。

e.瘻孔塞栓術。正しい。直接型内頸動脈海綿静脈洞瘻の第一選択は血管内治療による瘻孔閉塞で、経動脈的到達法が最も多く用いられます。

覚えるポイント

外傷後の眼球突出+拍動性雑音+結膜血管怒張は内頸動脈海綿静脈洞瘻を疑い、血管内治療で瘻孔を閉塞する。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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