第102回医師国家試験 I14(2008年)
正答:c・d
問題
右片麻痺を発症した5名の患者の頭部単純CT(別冊No. 1①〜⑤)を別に示す。
発症後24時間以内に撮影されたCTはどれか。2つ選べ。
a.①
b.②
c.③
d.④
e.⑤

正答の理由
公式正答はc・dです。虚血性脳卒中では、前方循環の大きな梗塞であっても発症後数時間のCT変化はわずかで、脳溝や島皮質リボンの消失、皮質白質境界の不明瞭化、中大脳動脈の高吸収化といった早期所見にとどまります。中等大から大きな梗塞が低吸収域として見え始めるのは虚血から6〜12時間後で、浮腫による腫脹・圧排は発症後48〜72時間が中心です。実測でも③④は左右の吸収値差が1〜2階調とほぼ対称で明らかな低吸収域がなく、①②⑤は患側半球が5.6〜16.1階調低く脳室の圧排や境界明瞭な低吸収域を伴っており、③④が24時間以内と判断できます。なお6〜12時間を過ぎれば24時間以内でも低吸収が見え始めうるため、この判別はあくまで典型例での目安です。
画像の見方
切り出した図(assets/102i/102i014-figure.png)を画素値で実測した。各CTで頭蓋内実質にあたる画素(グレー値45〜185)の平均を画像の左半分と右半分で比べると、画像右側から画像左側を引いた差は①−5.6、②−12.5、③−1.3、④−1.8、⑤−16.1階調であった。①②⑤では画像右側の半球が対側より明らかに低吸収で、①では画像左側に側脳室と脈絡叢の石灰化が描出される一方、画像右側の側脳室は描出されず脳溝も不明瞭である。⑤では画像右側のほぼ半球大の範囲に境界明瞭な低吸収域があり、脳溝が消失している。③④は左右差がほぼなく(差1〜2階調)、側脳室と脈絡叢石灰化が左右対称に描出され、明らかな低吸収域や正中構造の偏位を指摘できない。CT横断像は通常、観察者からみて画像右側が患者の左側として表示されるが、画像内に左右マーカーは写っていないため表示の向きは断定できない。
各選択肢の検討
a.①。誤り。画像右側の半球が対側より平均5.6階調低吸収で、同側の側脳室が描出されず脳溝も不明瞭で、浮腫による腫脹・圧排を示します。発症後48〜72時間に強まる変化で、24時間以内とは考えにくい所見です。
b.②。誤り。画像右側の半球が対側より平均12.5階調低吸収で、脳溝も不明瞭です。境界の明瞭な広い低吸収は虚血から6〜12時間以降に出現し、ここまでの変化は24時間以内では通常みられません。
c.③。正しい。左右の平均吸収値の差は1.3階調で、両側の側脳室と脳溝が対称に描出され、明らかな低吸収域も正中偏位もありません。CTがほぼ正常にみえる超急性期(発症後24時間以内)に合致します。
d.④。正しい。左右の平均吸収値の差は1.8階調で、両側側脳室前角と脈絡叢石灰化が対称に描出され、明らかな低吸収域はありません。③と同様に超急性期のCTと考えられます。
e.⑤。誤り。画像右側の中大脳動脈領域にほぼ半球大の境界明瞭な低吸収域があり(左右差16.1階調)、脳溝も消失しています。完成した梗塞の所見で、24時間以内の撮影ではありません。
覚えるポイント
発症24時間以内の脳梗塞のCTはほぼ正常か早期虚血サインのみ。低吸収がはっきりするのは6〜12時間以降、腫脹・圧排は48〜72時間がピーク。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。