第102回医師国家試験 H20(2008年)
正答:b
問題
インフォームドコンセントで正しいのはどれか。
a.医師法で定められている。
b.同意は無条件で撤回できる。
c.時間をかけて説得が行われる。
d.本人と家族の同意が必須である。
e.治療法の予後の説明は割愛できる。
正答の理由
公式正答はbです。インフォームドコンセントは、判断能力のある患者本人が説明を受けたうえで自分の意思として与えるものです。MSD ManualのInformed Consentの項は、患者には治療を拒否する権利があり、医療者は十分な情報提供を行ったうえで患者の決定に従うこと、拒否が不可解に見える場合でも更なる話し合いを始めるべきで、拒否していること自体を理由に判断能力を疑ってはならないと述べています。治療を受けるかどうかの決定権が患者にある以上、いったん与えた同意を撤回すること(以後の治療を拒否すること)も、理由や条件を示すことなくいつでもできます。なお日本法での位置付けは、e-Gov法令検索で医師法の全条文を通読しても「説明」に関する規定は1か所もなく、説明と同意の根拠は医療法第1条の4第2項「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」という努力義務規定にあります。
各選択肢の検討
a.医師法で定められている。誤り。e-Gov法令検索で閲覧できる医師法の本文には「説明」の語を含む規定がなく、説明と同意の努力義務は医療法第1条の4第2項に置かれています。
b.同意は無条件で撤回できる。正しく、これが正答。MSD Manualは患者が治療を拒否する権利を持ち、医療者はその決定に従うとしており、同意は条件を付けずにいつでも撤回できます。
c.時間をかけて説得が行われる。誤り。MSD Manualが求めているのは、治療しない場合の見通しを含む現在の医学的状態、各治療の利益・不利益、不確実性を患者が理解できるようにすることであって、同意させるための説得の手続ではありません。
d.本人と家族の同意が必須である。誤り。MSD Manualは同意の主体を法的・臨床的な判断能力のある患者本人としており、医療法第1条の4第2項も理解を得る相手を「医療を受ける者」としています。家族の同意は必須要件ではありません。
e.治療法の予後の説明は割愛できる。誤り。MSD Manualは、治療が成功した場合にその後の生活がどうなるかまで含めて回復の見通しを明確に伝えるべきだとしており、予後の説明は省けません。
覚えるポイント
インフォームドコンセントの法的な根拠は医師法ではなく医療法第1条の4第2項の努力義務で、患者本人の同意はいつでも無条件に撤回できる。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第102回医師国家試験問題および正答
- Informed Consent(MSD Manual Professional Edition)
- 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の四(e-Gov法令検索)
- 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)(e-Gov法令検索)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。