第102回医師国家試験 F1(2008年)
正答:e
問題
医療機関に対する患者の権利でないのはどれか。
a.治療法を選択する。
b.診療録の記載内容を知る。
c.セカンドオピニオンを得る。
d.診療報酬明細書の内容を知る。
e.疾病に伴う逸失利益の補償を得る。
正答の理由
リスボン宣言は、良質の医療を受ける権利、医師・医療機関を選ぶ自由と他の医師の意見を求める権利、自己決定の権利、診療記録に記載された自己の情報を受ける権利などを患者の権利として挙げています。a〜dはいずれも医療機関に対して求めうる事柄ですが、疾病によって失われた収入(逸失利益)の補償は、医療機関が患者に対して当然に負う義務ではなく、損害賠償や社会保険の領域の問題です。公式正答はeです。
各選択肢の検討
a.治療法を選択する。患者の権利である。リスボン宣言の自己決定の権利は、診断上の手続や治療に同意を与えるか差し控えるかを患者自身が決めるとしており、選択の自由の権利も担当医・病院を選び変更できると定めています。
b.診療録の記載内容を知る。患者の権利である。リスボン宣言の情報に対する権利は、いかなる医療上の記録であってもそこに記載されている自己の情報を受ける権利を認めています。厚生労働省の指針も、診療録を含む診療記録を患者等の求めに応じて閲覧に供し、または写しを交付することを「診療記録の開示」と定義しています。
c.セカンドオピニオンを得る。患者の権利である。リスボン宣言は「患者はいかなる治療段階においても、他の医師の意見を求める権利を有する」と明記しています。
d.診療報酬明細書の内容を知る。患者の権利である。出題当時すでに、厚生労働省保険局長通知(平成17年3月31日保発第0331009号)が、被保険者等から保険者に診療報酬明細書等の開示(写しの交付を含む)の求めがあったときは本人確認等のうえ開示するよう定めていました。現行の保険医療機関及び保険医療養担当規則第5条の2も、厚生労働大臣の定める保険医療機関に対し、費用の計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を無償で交付する義務を定めています。
e.疾病に伴う逸失利益の補償を得る。正しい(権利ではない)。リスボン宣言が挙げる権利は医療の質・選択・自己決定・情報・守秘・尊厳などであり、収入の補償は含まれません。補償は医療事故による損害賠償や労災・社会保険の枠組みで扱われる問題で、医療機関に対して当然に請求できる患者の権利ではありません。
覚えるポイント
患者の権利は医療の質・選択・自己決定・情報開示・守秘・尊厳が柱。逸失利益の補償は患者の権利には含まれない。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第102回医師国家試験問題および正答
- 患者の権利に関する世界医師会リスボン宣言(日本医師会訳)
- 厚生労働省:診療情報の提供等に関する指針
- 厚生労働省:診療報酬明細書等の被保険者等への開示について(平成17年3月31日保発第0331009号)
- 保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。