第102回医師国家試験 E55(2008年)
正答:b
問題
22歳の男性。交通事故のため搬入された。意識は清明。呼吸数16/分。脈拍92/分、整。血圧120/72 mmHg。胸部エックス線写真で縦隔の拡大がみられる。静脈路を確保した。
次に行う対応として適切なのはどれか。
a.縦隔鏡検査
b.胸部造影CT
c.胸部単純MRI
d.昇圧薬投与
e.緊急開胸術
正答の理由
公式正答はbです。交通事故という減速外傷で胸部エックス線写真に縦隔拡大がみられた場合、まず外傷性大動脈損傷(大動脈離断)を疑います。MSD Manualは、縦隔拡大を大動脈損傷を示唆する胸部単純写真所見の筆頭に挙げたうえで、単純写真の所見は感度も特異度も不十分なので、強い減速外傷を受けた患者には大動脈の画像検査を行うべきであるとし、精度の高い検査としてCTアンギオグラフィ(多くの外傷センターで直ちに施行でき迅速)と大動脈造影を挙げています。本例は意識清明、血圧120/72 mmHg、脈拍92/分と循環が保たれており、静脈路を確保した次の段階として造影CTで診断を確定するのが適切です。MSD Manualの胸部外傷の概説も、重篤な胸部外傷として大動脈離断を挙げ、鈍的外傷の診断を早く進めることの重要性を述べています。
各選択肢の検討
a.縦隔鏡検査。誤り。縦隔鏡は縦隔リンパ節などの生検手技で、MSD Manualが外傷性大動脈損傷の診断法として挙げているのはCTアンギオグラフィ・大動脈造影であり、縦隔鏡は含まれません。侵襲も大きく急性期の診断には用いません。
b.胸部造影CT。正しく、これが正答。MSD ManualはCTアンギオグラフィを外傷性大動脈損傷の第一選択の画像検査として挙げ、多くの外傷センターで直ちに施行でき迅速であるとしています。
c.胸部単純MRI。誤り。MSD Manualが挙げる大動脈損傷の検査にMRIは含まれていません。撮像に時間がかかり、監視装置の制約もあって外傷初期診療には向きません。
d.昇圧薬投与。誤り。血圧120/72 mmHgと低血圧はなく昇圧の適応がありません。MSD Manualはむしろ大動脈損傷では心拍数60〜80/分、収縮期血圧100 mmHg以下を目標にβ遮断薬で血圧・心拍を下げる(impulse control)と記載しています。
e.緊急開胸術。誤り。循環が保たれている段階で診断を確定しないまま開胸する根拠はありません。MSD Manualは現在の標準治療を胸部ステントグラフト内挿術とし、他の致命的損傷の評価・治療のあいだ修復を待つことができるとしています。
覚えるポイント
減速外傷+縦隔拡大は外傷性大動脈損傷を疑うサイン。循環が保たれていれば造影CT(CTアンギオグラフィ)で確認する。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。