職業・環境曝露と健康障害の組合せ|第102回医師国家試験E31

第102回医師国家試験 E31(2008年)

正答:a

問題

組合せで正しいのはどれか。

a.石綿 ―――― 胸膜のプラーク形成

b.金属ヒューム ―――― チトクロム酸化酵素の阻害

c.塩化ビニルモノマー ―――― 末梢血管の攣縮

d.径10μm以上の粉じん ―――― 肺胞への沈着

e.高気圧作業後の急な減圧 ―――― 体液中二酸化炭素の気泡化

正答の理由

胸膜プラークは石綿曝露の指標となる所見で、MSDも「胸膜病変は石綿曝露の特徴で、胸膜プラーク、石灰化、肥厚などを含む」とし、両側の胸膜プラークや横隔膜の石灰化は石綿曝露にほぼ特異的だとしています。他方、チトクロムc酸化酵素を阻害するのはシアン、肺胞に達するのは吸入性(respirable)画分でその中央カットポイントは4μm、減圧で気泡になるのは溶けていた窒素などの不活性ガスです。cの「塩化ビニルモノマー―末梢血管の攣縮」は塩化ビニル病のレイノー症状として実在する関連で、医学的に誤りとはいえません。それでも公式正答はaだけなので、試験の解答としてはaを選びます。

各選択肢の検討

a.石綿と胸膜のプラーク形成。正しい。石綿曝露では胸膜に限局性の線維性肥厚(プラーク)、石灰化、胸水、びまん性胸膜肥厚、中皮腫が生じ、プラークは曝露の指標になります。

b.金属ヒュームとチトクロム酸化酵素の阻害。誤り。酸化亜鉛ヒュームなどの吸入で起こるのは悪寒・発熱・筋肉痛・金属味などの金属熱です。チトクロムc酸化酵素を阻害して組織性低酸素を起こすのはシアンです。

c.塩化ビニルモノマーと末梢血管の攣縮。公式正答ではありません(正答はaのみ)。ただしこの組合せ自体を医学的な誤りとはいえません。ATSDRは高濃度に曝露された労働者に手の血流障害があり、寒冷で指が白くなり痛むと記載しており、これはレイノー現象です。塩化ビニル病はレイノー症状・強皮症様の皮膚硬化・指端骨溶解(acro-osteolysis)の3徴で知られ、曝露者の約6%にレイノー現象がみられたという報告もあります。出題は塩化ビニルの代表的な健康障害である肝血管肉腫を念頭に、aを唯一の正答としたとみられます。

d.径10μm以上の粉じんと肺胞への沈着。誤り。肺胞まで達する吸入性粉じんは中央カットポイント4μmの画分と定義され、浮遊粒子状物質も10μm以下の粒子を指します。10μm以上の粒子は上気道で捕捉され肺胞には達しません。

e.高気圧作業後の急な減圧と体液中二酸化炭素の気泡化。誤り。高圧下で血液や組織に溶け込み、減圧時に気泡となるのは窒素などの不活性ガスで、二酸化炭素ではありません。

覚えるポイント

石綿=胸膜プラーク。シアンがチトクロム酸化酵素阻害、減圧症は窒素の気泡、肺胞到達は4μm前後の吸入性粉じん。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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