除細動後の腎梗塞|第102回医師国家試験D54

第102回医師国家試験 D54(2008年)

正答:d

問題

60歳の男性。心房細動の電気的除細動の目的で入院した。30歳から高血圧。除細動処置を実施した日の夜から強い腰痛が出現した。腰痛は消炎鎮痛薬によって徐々に軽快したが、血清クレアチニン値が処置前の1.5mg/dlから処置後4日目には3.6mg/dlまで上昇した。処置翌日の腹部単純CT(別冊No.22A)と1か月後の腹部単純CT(別冊No.22B)とを別に示す。

診断はどれか。

a.水腎症

b.海綿腎

c.腎結核

d.腎梗塞

e.多発性嚢胞腎

別冊No.22A 処置翌日の腹部単純CT横断像。肝・膵・大動脈と両腎の上部が写り、水腎症・結石・嚢胞は指摘できない。
別冊No.22A / 出典:厚生労働省・第102回D別冊(原本の該当ページ)
別冊No.22B 1か月後の腹部単純CT横断像。Aより尾側の高さで両腎が腎洞まで明瞭に写り、水腎症・結石・嚢胞は指摘できない。
別冊No.22B / 出典:厚生労働省・第102回D別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

心房細動に対する電気的除細動を行った当夜から強い腰痛が起こり、血清クレアチニンが1.5mg/dlから4日目に3.6mg/dlまで上がりました。処置翌日の単純CTにも1か月後の単純CTにも、水腎症・結石・嚢胞はありません。腎梗塞の総説は、急性腎梗塞の二大原因が心臓や大動脈の血栓に由来する塞栓と腎動脈のその場での血栓症であること、心房細動が危険因子であること、腹痛や側腹部痛のため腎結石や腎盂腎炎と間違えられやすいこと、血尿がほぼ全例にみられ、LDHが基準の5倍程度まで上がる鋭敏な指標であることを述べています。除細動を契機に心内血栓が飛んで腎動脈が閉塞した塞栓症と考えられ、公式正答はdです。同じ総説は、側腹部痛ではまず単純CTを撮るが、結石がなければ造影CTで腎梗塞を評価するとし、典型像は楔状の造影欠損で、超音波は感度が低く、核医学検査では集積低下がみられるとしています。

画像の見方

No.22A(処置翌日)は上腹部の単純CT横断像で、肝、胃・十二指腸のガス、膵、大動脈、椎体が写る。両腎は上部が含まれるが、画像左(患者の右)は肝と、画像右(患者の左)は腸管と接していて輪郭を十分に追えない。腎盂腎杯の拡張(水腎症)、結石や石灰化、嚢胞は指摘できない。No.22B(1か月後)はAより尾側の高さで、両腎が腎洞の脂肪まで含めて明瞭に写る。こちらも水腎症・結石・嚢胞はなく、明らかな楔状の低吸収域も指摘できない。AとBは椎体の幅を画素で測るとほぼ同じ倍率で印刷されているが、スライスの高さが異なり、Aでは腎の輪郭が追えないため、2枚を比べて腎の大きさの変化や輪郭の陥凹を判定することはできない。梗塞の左右も、この2枚からは決められない。

各選択肢の検討

a.水腎症。誤り。CTに腎盂腎杯の拡張がなく、尿路の通過障害を示す所見もありません。

b.海綿腎。誤り。髄質の集合管が先天的に拡張する病気で、髄質に小さな石灰化が集まる像をとります。本例のCTに髄質の石灰化はなく、急な腎機能悪化という経過にも合いません。

c.腎結核。誤り。亜急性から慢性に進む感染で、膿尿や空洞形成、石灰化を伴います。除細動当夜の急な発症は説明できません。

d.腎梗塞。正しい。心房細動の除細動を契機として心内血栓が腎動脈へ飛び、急激な腰背部痛と腎機能低下を起こしたものです。

e.多発性嚢胞腎。誤り。両腎が多数の嚢胞で腫大する病気ですが、本例のCTに嚢胞も腎の腫大もありません。

覚えるポイント

心房細動の除細動後の急な腰背部痛+腎機能悪化は腎梗塞。単純CTでは分からないことがあり、造影CTで楔状の血流欠損をみる。血尿とLDH上昇も手がかり。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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