大動脈弁狭窄症の身体所見|第102回医師国家試験D24

第102回医師国家試験 D24(2008年)

正答:d

問題

72歳の女性。胸部圧迫感を主訴に来院した。1か月前から駅の階段を上がるときに前胸部の圧迫感を自覚していた。数年前から心雑音を指摘されていたが、放置していた。心エコー図(別冊No. 2A、B)を別に示す。

この患者でみられないのはどれか。

a.Ⅳ 音

b.振戦〈thrill〉

c.遅脈

d.脈圧の増大

e.頸部に放散する収縮期雑音

別冊No. 2A・B 心エコー図の左室長軸断層像(収縮期)。AはBモード、Bはカラードプラで、RV・LV・Ao・LAのラベルと「収縮期」の説明が付く。Bでは大動脈弁の高さにモザイク状の血流信号があり、大動脈側へ広がる。
別冊No. 2A、B / 出典:厚生労働省・第102回D別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

公式正答はdです。労作時の前胸部圧迫感と長年の心雑音があり、心エコー図の左室長軸像では大動脈弁の高さに高輝度のエコーが集まり、カラードプラでは収縮期に大動脈弁の位置から大動脈側へモザイク状の乱流がみられます。大動脈弁狭窄症の所見です。大動脈弁狭窄症では1回拍出量が減って駆出に時間がかかるため、頸動脈・末梢動脈の拍動は小さく立ち上がりが遅く(小脈・遅脈)、脈圧が増大することはありません。脈圧が増大するのは大動脈弁閉鎖不全症の所見です。

画像の見方

Aは収縮期の左室長軸断面(Bモード)で、右室・左室・大動脈・左房が描出されている。大動脈基部の弁の高さには周囲より輝度の高いエコーが集まっており、収縮期にもかかわらず弁尖が大動脈内腔いっぱいに開いた像は確認できない。ただしスキャンの階調が粗く、弁尖そのものの肥厚や開放制限の程度は断定できない。Bは同じ断面のカラードプラ(収縮期)で、大動脈弁の高さに黄・緑・赤が入り混じるモザイク状(乱流)の信号があり、大動脈側へ向かって広がる。カラーの表示範囲が狭く、信号はその右縁で切れているため、大動脈内でどこまで及ぶかはこの1枚では追えない。画像に計測値の表示がないため、壁厚・弁口面積・圧較差は数値化できない。原画はスキャンで、裏面の文字の透けが一部に重なっている。

各選択肢の検討

a.Ⅳ音。みられます。左室肥大で硬くなった左室へ心房収縮が血液を送り込むため、心尖部でⅣ音を聴取します(心尖拍動として触れることもあります)。

b.振戦〈thrill〉。みられます。重症例では雑音に一致して胸骨左上縁で収縮期の振戦を触れます。

c.遅脈。みられます。頸動脈・末梢動脈の拍動が小さく立ち上がりが遅い小脈・遅脈〈pulsus parvus et tardus〉が特徴です。

d.脈圧の増大。みられず、これが正答。駆出が妨げられて1回拍出量が減るため脈の振幅は小さくなり、脈圧が増大することはありません。脈圧の増大は大動脈弁閉鎖不全症でみられる所見です。

e.頸部に放散する収縮期雑音。みられます。右第2肋間を中心とする粗い駆出性収縮期雑音が頸動脈へ放散します。

覚えるポイント

大動脈弁狭窄症は小脈・遅脈で脈圧は狭い。脈圧が広がるのは大動脈弁閉鎖不全症。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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