第102回医師国家試験 C12(2008年)
正答:d
問題
右鼠径・大腿部の写真(別冊No.1)を別に示す。赤い線は拍動を触れる部位を示す。
大腿静脈から中心静脈カテーテルを挿入する際の刺入部位はどこか。
a.①
b.②
c.③
d.④
e.⑤

正答の理由
日本麻酔科学会のガイドは「大腿静脈穿刺は、鼠径靭帯の2横指尾側、大腿動脈の内側を穿刺目標とするという記載が一般的である。注意すべき点は、穿刺針が鼠径靭帯より頭側に進まないようにすることである」としています。写真の赤い線は大腿動脈の拍動を触れる範囲を示し、矢印から画像の上が頭側、左が外側(右が内側)と分かります。線の内側にあるのは④と⑤の2つだけで、線からの距離はほぼ等しく、違いは頭尾方向の高さです。④は線の頭側端から約8割、⑤は約3割の高さにあり、「大腿動脈の内側で、拍動が触れ始める高さ(鼠径靱帯のすぐ下)より尾側」という目標に合うのは④です。公式正答はdです。なお鼠径靱帯そのものは写真に写っておらず、④と⑤の区別は写真上の高さの計測とガイドの記載に基づく判断です。
画像の見方
赤い線は右鼠径部を斜めに走り、頭側端は陰毛の縁に接し、尾側端は外側下方の大腿へ伸びる。矢印の表示から画像の上が頭側、左が外側(すなわち右が内側)である。切り出し画像(1100×1464px)上で赤い線を直線近似すると x=−0.405y+795、頭側端 y=438、尾側端 y=686。①(中心 y414・x532)は線の延長より約95px外側で、かつ線の頭側端よりわずかに頭側。②(y518・x486)は線より約99px外側。③(y580・x555)は線上(差約5px)。⑤(y509・x676)は線より約87px内側で、線の頭側端から約29%の高さ。④(y632・x625)は線より約86px内側で、線の頭側端から約78%の高さ。⑤と④の内側方向の距離はほぼ等しく、違いは頭尾方向の高さである。鼠径靱帯そのものは写真には描かれていない。被写体は成人の右鼠径部から大腿で、陰毛は写るが性器は暗色の衣類で覆われており写っていない。
各選択肢の検討
a.①。誤り。赤い線の外側にあり、しかも線の頭側端より頭側にあたります。大腿静脈は大腿動脈の内側にあるため外側では当たらず、ガイドは穿刺針が鼠径靱帯より頭側へ進まないよう注意を促し、大腿静脈穿刺の合併症として大腿神経損傷・腹腔穿刺・後腹膜血腫を挙げています。
b.②。誤り。拍動線の外側にあたります。大腿動脈の外側は大腿神経の側で、静脈は得られません。
c.③。誤り。赤い線の上に重なっており、大腿動脈そのものを穿刺する位置です。
d.④。正しい。拍動線の内側で、かつ線の尾側寄り(頭側端から約8割の高さ)にあり、「大腿動脈の内側、鼠径靱帯の2横指尾側」という目標に合致します。
e.⑤。誤り。拍動線の内側ではありますが、拍動を触れる範囲の頭側寄り(頭側端から約3割の高さ)にあり、鼠径靱帯に近く、針が靱帯より頭側へ進みやすい位置です。
覚えるポイント
大腿静脈は大腿動脈の拍動のすぐ内側。鼠径靱帯の2横指尾側を狙い、靱帯より頭側へは進めない(外側から神経・動脈・静脈の順)。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。