緊張性気胸への初期対応|第102回医師国家試験A56

第102回医師国家試験 A56(2008年)

正答:d

問題

23歳の男性。仕事中に突然の胸痛を発症し、次第に呼吸困難を生じたため搬入された。不隠状態である。呼吸数36/分。脈拍112/分、整。血圧94/60mmHg。胸部エックス線写真(別冊No. 22)を別に示す。

まず行うのはどれか。

a.鎮静薬投与

b.昇圧薬投与

c.人工呼吸

d.胸腔ドレーン挿入

e.緊急手術

別冊No. 22 胸部エックス線写真正面像。左胸腔は右に比べて透過性が亢進して肺紋理に乏しく、左横隔膜は低位で平低化している。
別冊No. 22 / 出典:厚生労働省・第102回A別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

突然の胸痛に続く進行性の呼吸困難、呼吸数36/分、頻脈と血圧低下、不穏があり、胸部エックス線写真では左肺野の透過性亢進と肺紋理の減少、左横隔膜の低位・平低化がみられます。血圧低下と不穏を伴う左気胸であり、胸腔内圧の上昇が静脈還流を妨げている緊張性気胸として、循環動態が破綻する前に胸腔内の空気を抜く必要があります。選択肢のなかで脱気につながるのは胸腔ドレーン挿入であり、公式正答はdです。なお実臨床では確定診断を待たずにまず太い針による胸腔穿刺(針減圧)を行い、続いて胸腔ドレーンを留置します。

画像の見方

胸部エックス線正面像。左右対称の位置で画素値を比べると、左肺野(上・中・下いずれも外側)は右の対応部位より明らかに黒く(左の平均輝度57〜66に対し右は82〜87)、局所の濃淡の揺らぎも小さく(左2.5〜3.6に対し右3.6〜4.7)、肺紋理に乏しい。左横隔膜は右より約200画素(肺野高の約2割)低い位置にあり、平低化している。一方、虚脱肺の縁(臓側胸膜線)に相当する明瞭な段差はこの複写では追えず、縦隔・心陰影の偏位も本像だけでは断定できない。右肺野の含気と肺紋理は保たれ、皮下気腫や肋骨骨折ははっきりしない。

各選択肢の検討

a.鎮静薬投与。誤り。不穏は低酸素と循環不全によるもので、鎮静は呼吸抑制を招き病態を悪化させます。

b.昇圧薬投与。誤り。血圧低下の原因は胸腔内圧上昇による静脈還流の障害で、脱気しなければ改善しません。

c.人工呼吸。誤り。陽圧換気は胸腔内への空気の流入を増やし、緊張性気胸を悪化させる危険があります。

d.胸腔ドレーン挿入。正しい。胸腔内の空気を排出して虚脱した肺を再膨張させ、縦隔偏位と静脈還流障害を解除します。

e.緊急手術。誤り。初回の気胸ではまず脱気を行います。手術はドレナージで改善しない場合や再発例などで検討します。

覚えるポイント

突然の胸痛+呼吸困難+血圧低下+一側の透過性亢進と縦隔偏位=緊張性気胸。治療はまず脱気(針減圧→胸腔ドレーン)。陽圧換気は悪化させる。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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