正中頸嚢胞(甲状舌管嚢胞)|第102回医師国家試験A45

第102回医師国家試験 A45(2008年)

正答:d

問題

45歳の男性。3年前から自覚している頸部の腫瘤が徐々に増大してきたため来院した。頸部の写真(別冊No. 13A)と頸部単純CT(別冊No. 13B)とを別に示す。

考えられるのはどれか。

a.粉瘤

b.脂肪腫

c.甲状腺腫

d.正中頸嚢胞

e.リンパ管腫

別冊No. 13A 頸部の写真。頭部を後屈した正面像で、オトガイ下の前頸部が正中付近で丸く膨隆している。
別冊No. 13A / 出典:厚生労働省・第102回A別冊(原本の該当ページ)
別冊No. 13B 頸部単純CT横断像。下顎骨のレベルで、オトガイ下の前方・正中からやや左寄りに、境界明瞭で内部がほぼ均一な軟部濃度の腫瘤があり、前方へ膨隆している。
別冊No. 13B / 出典:厚生労働省・第102回A別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

3年かけて緩徐に増大した前頸部腫瘤で、写真では正中付近の膨隆、単純CTでは下顎骨のレベルで正中からやや左側に境界明瞭で内部が均一な腫瘤がみられます。甲状舌管の遺残から生じる正中頸嚢胞(甲状舌管嚢胞)は、前頸部の正中あるいはわずかに側方(多くはやや左)に生じる無痛性で可動性の腫瘤で、舌骨下が最も多いものの舌骨上にも生じ、成人で見つかることもあります。公式正答はdです。

画像の見方

写真Aは頭部を後屈した前頸部の正面像で、オトガイ下から前頸部の正中付近が丸く膨隆し、皮膚に発赤や潰瘍はみられない。写真Bは下顎骨(高吸収の弓状構造)が写る高さの単純CT横断像で、下顎骨の前方、正中からやや左寄り(画像では向かって右寄り)に、境界明瞭で前方へ突出する腫瘤がある。腫瘤の内部は画素値のばらつきが小さく(11×11画素窓の標準偏差が約4)ほぼ均一な軟部濃度で、空気や脂肪に相当する著明な低吸収域も石灰化も含まない。ただし本図は網点の入った複写で画面内の明るさにむらがあり、CT値としての定量的な比較はできない。

各選択肢の検討

a.粉瘤。誤り。頸部の表皮嚢腫(粉瘤)は皮下組織内、帯状筋より浅い位置に生じることが多く、本例のように下顎骨前方の深部で前頸部正中を広く押し上げる腫瘤としては典型的ではありません。ただし表皮嚢腫が正中頸嚢胞とまぎらわしい経過をとった報告もあり、最終的な区別は病理によります。

b.脂肪腫。誤り。脂肪腫であればCTで皮下脂肪と同じ低吸収を示しますが、本例の腫瘤は内部がほぼ均一な軟部濃度で、脂肪に相当する低吸収域を含みません。

c.甲状腺腫。誤り。甲状腺は喉頭・気管の前面にあり、本例の腫瘤は下顎骨が写る高さのオトガイ下にあって位置が合いません。

d.正中頸嚢胞。正しい。甲状舌管の遺残による先天性嚢胞で、前頸部正中(やや左寄りのことが多い)の無痛性・可動性腫瘤として現れ、嚥下や舌の突出で動くのが特徴です。治療はSistrunk手術です。

e.リンパ管腫(リンパ管奇形)。誤り。低流速の脈管奇形で、大嚢胞型・小嚢胞型・混合型の嚢胞性病変として現れます。頭頸部が好発部位ですが、治療を受ける患者の多くは乳幼児から学童期で、成人になって初めて正中に充実性に近い濃度の腫瘤として増大する本例とは合いません。

覚えるポイント

前頸部正中(やや左寄り)の無痛性・可動性腫瘤で嚥下・舌突出で動けば正中頸嚢胞。甲状腺腫は喉頭・気管前面、粉瘤は皮膚直下。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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