第102回医師国家試験 A34(2008年)
正答:a・b
問題
71歳の男性。数年前に出現した顔面の紅色皮疹が拡大してきたことを主訴に来院した。顔面の写真(別冊No.3A)と同部の病理組織H-E染色標本(別冊No.3B)とを別に示す。
治療法として適切なのはどれか。2つ選べ。
a.切除
b.凍結療法
c.温熱療法
d.放射線治療
e.紫外線療法


正答の理由
高齢男性の露光部(頬)に数年かけてゆっくり拡大した紅色局面があり、中央に黒褐色の小さな痂皮を伴います。病理組織では好塩基性に濃染する腫瘍細胞の胞巣が表皮から真皮へ落ち込み、胞巣辺縁では細胞が柵状に並んでいます。基底細胞癌の像です。MSDマニュアルは基底細胞癌の治療として、切除・掻爬・電気乾固といった外科的方法を主として、外用化学療法(イミキモド、5-FU)・凍結療法・光線力学療法などの非外科的方法、ときに放射線治療を挙げています。選択肢のなかで実際に行われる治療は切除と凍結療法であり、公式正答はa・bです。なお現行のリスク分類では顔面を含む頭頸部は高リスク部位とされ、Mohs手術や切除縁を確認する切除が勧められる点は出題当時より明確になっています。
画像の見方
3A:頬部に境界明瞭な紅色〜紅褐色の局面があり、中央に小さな黒褐色の痂皮を伴う。周囲の皮膚には日光黒子と思われる褐色斑が多発する。3B:表皮と連続して真皮内へ突出する好塩基性腫瘍細胞の胞巣があり、辺縁の細胞は柵状に配列し、胞巣周囲に裂隙がある。免疫染色など追加情報はないため、亜型(表在型か結節型か)は本図だけでは断定しない。
各選択肢の検討
a.切除。正しい。基底細胞癌の治療の基本で、組織学的に断端を確認でき再発率が低い方法です。
b.凍結療法。正しい。低リスクの基底細胞癌に対する非外科的治療の一つとして確立しています。手術に比べ再発率はやや高く、現行のリスク分類では顔面は高リスク部位にあたるため、実際の症例では切除が優先されます。
c.温熱療法。誤り。基底細胞癌に対する標準的な治療として位置づけられていません。
d.放射線治療。公式正答ではない。MSDマニュアルは低リスク病変に「ときに」用いる方法として挙げており、手術が難しい症例では有力な選択肢です。ただし本例のような切除可能な病変では外科的切除や凍結療法などの局所療法が先に選ばれ、2つ選ぶ設問では選ばれません。
e.紫外線療法。誤り。紫外線曝露は基底細胞癌の最大の危険因子であり、治療にはなりません。
覚えるポイント
露光部にゆっくり拡大する紅色局面+病理で辺縁柵状配列の好塩基性胞巣=基底細胞癌。治療は切除が基本で、低リスク例では凍結療法なども選択肢。紫外線は原因であり治療ではない。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。