第120回医師国家試験 F72(2026年)
正答:c
問題
20歳台の女性。意識障害のため救急車で搬入された。
現病歴:自宅で倒れているのを友人が発見し、呼びかけても反応が乏しいため救急車を要請した。病院へ向かう途中で全身けいれんを認めたが、病院到着時は治まっていた。
既往歴:不明
生活歴:不明
現症:意識レベルはJCSⅢ-100。体温36.7 ℃。心拍数102/分、整。血圧90/50 mmHg。呼吸数28/分。SpO2 89%(マスク5 L/分酸素投与下)。
舌根沈下が強く下顎挙上してもSpO2は改善しない。バッグバルブマスクによる換気も不十分である。
身体診察を継続したところ皮膚はやや湿潤。瞳孔径は両側5.0 mmで、対光反射は両側やや緩慢。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で肝・脾を触知しない。腸雑音に異常を認めない。腱反射は正常である。
検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖(−)、ケトン体(−)、潜血(−)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球462万、Hb 12.9 g/dL、Ht 39%、白血球11,300、血小板20万、PT-INR 1.0(基準0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白7.1 g/dL、アルブミン3.8 g/dL、総ビリルビン0.8 mg/dL、直接ビリルビン0.2 mg/dL、AST 28 U/L、ALT 20 U/L、LD 160 U/L(基準124〜222)、CK 120 U/L(基準41〜153)、尿素窒素17 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL、血糖92 mg/dL、Na 134 mEq/L、K 4.3 mEq/L、Cl 99 mEq/L。心電図は洞調律で、QT時間の延長を認める。胸部エックス線写真で心陰影の拡大は認めず、肺野に異常を認めない。頭部単純CTに異常を認めない。
来院した友人によると室内に大量の薬の空シートを認めたという。
迅速簡易定性検査で1つの薬剤が検出された。
服用したと考えられる薬剤はどれか。
a.コカイン
b.アンフェタミン
c.三環系抗うつ薬
d.フェノバルビタール
e.ベンゾジアゼピン系睡眠薬
正答の理由
意識障害、全身けいれん、低血圧、頻脈に加えてQT時間延長を認めており、三環系抗うつ薬の過量服用による中枢神経毒性・心毒性が最も合います。したがってcを選びます。尿の迅速簡易定性検査で検出され得る薬剤は複数あるため、陽性という情報だけでは薬剤を絞り込めません。散瞳などの抗コリン作用も参考になりますが、所見の一部だけで判断せず、神経症状と循環器所見を総合します。
各選択肢の検討
a.コカイン:交感神経刺激による興奮・高血圧・頻脈などが典型的で、本例の意識抑制、低血圧と心電図所見の組合せでは三環系抗うつ薬がより適切です。
b.アンフェタミン:交感神経刺激症状が中心です。提示された神経・循環器所見全体からは三環系抗うつ薬を考えます。
c.三環系抗うつ薬:過量服用で意識障害、けいれん、低血圧、不整脈やQT延長などを来し、本例に合います。
d.フェノバルビタール:意識・呼吸の抑制や低血圧は起こりますが、けいれんとQT延長を合わせた本例では三環系抗うつ薬が最も適切です。
e.ベンゾジアゼピン系睡眠薬:意識抑制は起こりますが、単独中毒でのけいれん・顕著な心毒性は本例を説明する典型的な組合せではありません。
覚えるポイント
三環系抗うつ薬中毒では、意識障害やけいれんだけでなく心電図変化・低血圧にも注目します。尿検査は補助所見であり、心電図監視と全身状態の評価が重要です。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。