第120回医師国家試験 F49(2026年)
正答:c
問題
64歳の男性。腰痛を主訴に来院した。2週間前に腰痛をきっかけに多発性骨髄腫と診断され治療を受けている。腰痛に対してアセトアミノフェンを服用していたが痛みが強くなったため家族に付き添われて受診した。3年前から胃潰瘍を繰り返している。意識は清明。身長168 cm、体重58 kg。体温36.4 °C。脈拍80/分、整。血圧130/78 mmHg。呼吸数14/分。SpO2 98 % (room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球308万、Hb 10.8 g/dL、Ht 29 %、白血球4,400 (分葉核好中球57 %、好酸球4 %、単球6 %、リンパ球33 %)、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白10.8 g/dL、アルブミン3.1 g/dL、IgG 6,912 mg/dL (基準861〜1,747)、IgA 22 mg/dL(基準93〜393)、IgM 7 mg/dL (基準33〜183)、AST 22 U/L、ALT 23 U/L、LD 180 U/L (基準124〜222)、尿素窒素17 mg/dL、クレアチニン1.8 mg/dL。CRP 0.1 mg/dL。腹部骨盤部単純CTで腰椎と腸骨に多発性の溶骨所見を認めた。
疼痛コントロールを強化するにあたり、適切な対応はどれか。
a.NSAID経口薬に変更する。
b.塩酸モルヒネを急速静注する。
c.オキシコドン経口薬を追加する。
d.フェンタニル貼付薬に変更する。
e.モルヒネ塩酸塩水和物坐薬に変更する。
正答の理由
アセトアミノフェンで十分に抑えられない、多発性骨髄腫の骨病変による痛みです。反復する胃潰瘍とクレアチニン高値があり、NSAIDへの変更は不向きです。経口投与を妨げる所見がないため、経口オキシコドンを追加するcが最も適切です。腎機能低下時はオキシコドンでも血中濃度が上がり得るため、慎重に開始・調整します。
各選択肢の検討
a.NSAID経口薬に変更する:胃潰瘍の再発や腎機能悪化のリスクがあり、本例の鎮痛強化としては適切ではありません。
b.塩酸モルヒネを急速静注する:オピオイド未使用の本例で急速静注を行うと、呼吸抑制などの危険があります。腎機能低下による活性代謝物の蓄積にも注意が必要です。
c.オキシコドン経口薬を追加する:経口投与可能な患者のがん疼痛に用いる強オピオイドで、本問で最も適切な選択です。効果と副作用を評価しながら調整します。
d.フェンタニル貼付薬に変更する:貼付薬は効果の立ち上がりや用量調整に時間を要し、痛みが増悪している本例の初期調整では経口薬の追加を優先します。貼付薬の初回使用の可否は製剤ごとに異なります。
e.モルヒネ塩酸塩水和物坐薬に変更する:経口投与困難の記載がなく、直腸投与へ変更する利点が乏しいうえ、坐薬でもモルヒネ代謝物の腎排泄の問題は残ります。
覚えるポイント
がん疼痛の薬剤と投与経路は、痛みの程度、内服の可否、腎機能、消化性潰瘍歴を合わせて選びます。オピオイド導入後は眠気・呼吸抑制・便秘などを確認します。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。