第120回医師国家試験 E41(2026年)
正答:b
問題
75 歳の男性。尿量の減少を主訴に来院した。
現病歴 : 約 1 年前から排尿困難感を自覚していたが医療機関を受診しなかった。2 日前から感冒様症状があり、自宅近くの診療所から総合感冒薬とアセトアミノフェンが処方され内服していた。昨夜、飲酒をした後から排尿困難感が悪化し、尿が間欠的に少量しか出なくなった。下腹部の膨満感も強くなったため、救急外来を受診した。
既往歴 : 高血圧症、糖尿病。
生活歴 : 喫煙は 70 歳まで 10 本/日を 50 年間。飲酒は機会飲酒。
家族歴 : 特記すべきことはない。
現症 : 意識は清明。身長 175 cm、体重 77 kg。体温 36.4 °C。脈拍 64/分、整。血圧 140/92 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 97 % (room air)。努力呼吸を認めない。皮膚、口腔内の乾燥を認めない。腹部は下腹部が膨隆しており、やや硬い。軽度の圧痛がある。腸雑音に異常を認めない。直腸指診で径 5 cm、弾性硬の前立腺を触知し、圧痛を認めない。
検査所見 : 尿所見:蛋白(−)、糖 1 +、潜血(−)、沈渣に異常を認めない。血液所見:赤血球 489 万、Hb 15.0 g/dL、Ht 44 %、白血球 5,200、血小板 17 万。血液生化学所見:総蛋白 7.7 g/dL、アルブミン 4.8 g/dL、総ビリルビン 0.8 mg/dL、AST 26 U/L、ALT 15 U/L、LD 200 U/L (基準 124〜222)、ALP 67 U/L (基準 38〜 113)、γ‐GT 40 U/L(基準 13〜64)、アミラーゼ 108 U/L (基準 44〜132)、CK 180 U/L(基準 59〜248)、尿素窒素 14 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、尿酸 6.6 mg/dL、血糖 130 mg/dL、HbA1c 6.5 % (基準 4.9〜6.0)、Na 138 mEq/L、K 4.1 mEq/L、Cl 100 mEq/L。CRP 0.1 mg/dL。腹部超音波像(別冊No. 5)を別に示す。
最も考えられる病態はどれか。
a.脱水
b.尿閉
c.心不全
d.腸閉塞
e.急性腎障害


正答の理由
長期の排尿困難に続いて排尿量が著減し、下腹部膨隆と膀胱内の大量の尿貯留を認めます。尿が作られていない状態よりも、膀胱から排出できない尿閉が最も考えられます。少量ずつ尿が出ていても尿閉を否定できません。
画像の見方
膀胱は大きく拡張し、尿の貯留を認めます。腎臓の画像では左の腎盂拡張もみられます。腎機能の採血値が保たれていても、尿の排出障害への対応が必要です。
各選択肢の検討
a.脱水:皮膚・口腔内の乾燥がなく、膀胱が大きく拡張している所見と合いません。
b.尿閉:排尿困難、下腹部膨隆、膀胱の拡張を説明でき、正答です。
c.心不全:呼吸循環系のうっ血所見を認めず、膀胱内の尿貯留を直接説明しません。
d.腸閉塞:腸雑音に異常はなく、画像で示された膀胱の拡張と排尿症状が診断の中心です。
e.急性腎障害:クレアチニンは0.9 mg/dLであり、提示された情報では急性腎障害を第一に考えません。閉塞が続けば腎障害を来すことはあります。
覚えるポイント
尿量減少では、腎臓で尿が作られないのか、作られた尿を排出できないのかを区別します。下腹部診察と膀胱の超音波評価が役立ちます。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。