第120回医師国家試験 E31(2026年)
正答:d
問題
56 歳の女性。大腸癌の末期で在宅療養中である。夫と 2 人暮らし。訪問診療の開始時に本人および同居している夫と話し合い、心肺蘇生処置をしない方針(DNAR)で合意され診療録に記載してある。徐々に全身状態は悪化し、数日前から食事量が低下していた。昨日に意識がもうろうとしたため往診したところ、収縮期血圧が 80 mmHg 台に低下し、尿量が減少していた。 今朝、呼吸が停止していると夫から連絡があった。 1 時間後患者を診察し、呼吸停止と瞳孔散大を確認した。夫に DNAR の方針は変わっていないことを確認したが、別居の息子から心肺蘇生処置を希望された。
息子への説明で適切なのはどれか。
a.「救急搬送します」
b.「胸骨圧迫をはじめます」
c.「人工呼吸をはじめます」
d.「お母さんの意思(DNAR)を尊重しましょう」
e.「電気ショック(電気的除細動)を試してみます」
正答の理由
本人・夫と話し合って合意し、診療録にも記載したDNARの方針があります。終末期の経過で呼吸停止に至った本例では、息子の気持ちを受け止めながら、本人が希望していた心肺蘇生を行わない方針を説明し、その意思を尊重するdを選びます。
各選択肢の検討
a.「救急搬送します」:蘇生を目的に直ちに搬送するという説明は、確認された本人の方針に沿いません。DNARがすべての状況で搬送を禁止するという意味ではありません。
b.「胸骨圧迫をはじめます」:本人と合意した心肺蘇生を行わない方針に反します。
c.「人工呼吸をはじめます」:本例で蘇生処置として開始する対応は、合意した方針と一致しません。DNARだけで心停止前の呼吸管理を一律に差し控えるわけではありません。
d.「お母さんの意思(DNAR)を尊重しましょう」:本人が事前に示し、共有されていた希望を尊重する説明で、正答です。
e.「電気ショックを試してみます」:除細動も心肺蘇生の一環であり、希望に反して試みる対応は選びません。
覚えるポイント
DNARは心停止時に心肺蘇生を試みないという方針であり、苦痛の緩和や通常の医療・看護を一律に中止する指示ではありません。家族の間で意見が異なるときも、本人の意思と話し合いの経過を丁寧に共有します。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。