第120回医師国家試験 D67(2026年)
正答:b
問題
58 歳の男性。労作時の呼吸困難を主訴に来院した。今朝、起床後から労作時呼吸困難が出現した。通常通りに出勤したが呼吸困難が持続しており、処方されていた吸入薬を使用後も改善がみられなかったため受診した。35 歳時から①喘息に対して吸入療法中。57 歳時から②臨床病期IV期の非小細胞肺癌に対して治療中。③2 週間前にインフルエンザワクチン接種を受けた。④築 35 年の木造住宅に住んでいる。⑤自宅で鳥を飼育している。意識は清明。身長 172 cm、体重 67 kg。体温36.5 °C。 脈拍 92/分、 整。 血圧 138/90 mmHg。 呼吸数 20/分。 SpO2 92 % (room air)。頸静脈の怒張と口唇のチアノーゼとを認めない。心雑音を聴取しないが胸骨左縁第 2 肋間でII音の亢進を認める。呼吸音に異常を認めない。下腿に浮腫を認めない。血液所見:赤血球 452 万、Hb 13.8 g/dL、Ht 41 %、白血球 5,400、血小板21 万、PT‐INR 1.0(基準 0.9〜1.1)、D ダイマー4.4 μg/mL (基準 1.0 以下)。血液生化学所見:総ビリルビン 1.0 mg/dL、 AST 21 U/L、 ALT 9 U/L、 LD 306 U/L(基準 124〜222)、CK 60 U/L (基準 59〜248)、尿素窒素 11 mg/dL、クレアチニン 0.6 mg/dL、血糖 114 mg/dL。胸部造影 CT (別冊No. 30)を別に示す。
下線部のうち、この疾患のリスクファクターはどれか。
a.①
b.②
c.③
d.④
e.⑤

正答の理由
急に出現した呼吸困難、低酸素血症、Dダイマー上昇と、造影CTの肺動脈内の造影欠損から肺血栓塞栓症を考えます。治療中の進行肺癌は静脈血栓塞栓症の重要なリスク因子であり、②が正答です。がんに伴う凝固能亢進に加え、治療や活動性の低下なども血栓形成に関わります。
画像の見方
造影された肺動脈内に、周囲より低吸収の造影欠損を認め、肺動脈内の血栓を考えます。提示された1断面だけから血栓の全範囲や血行動態上の重症度までは確定しません。
各選択肢の検討
a.①:喘息は呼吸困難の鑑別に関わりますが、本問の肺血栓塞栓症に対する代表的なリスク因子として選ぶのは悪性腫瘍です。
b.②:活動性の悪性腫瘍は静脈血栓塞栓症の重要なリスク因子で、正答です。
c.③:インフルエンザワクチンの接種歴を、今回の肺血栓塞栓症の原因とする根拠はありません。
d.④:住環境は過敏性肺炎などの問診で参考になりますが、肺血栓塞栓症のリスク因子として選ぶ項目ではありません。
e.⑤:鳥の飼育歴は鳥関連過敏性肺炎を考える手掛かりですが、肺血栓塞栓症のリスク因子としては②が適切です。
覚えるポイント
肺血栓塞栓症では呼吸音が正常で下肢浮腫がなくても否定できません。Dダイマー上昇だけでは診断できず、臨床所見と造影CTなどを組み合わせて判断します。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。