脊椎感染で新たな下肢麻痺があれば肛門括約筋緊張も評価する|第120回医師国家試験C75

第120回医師国家試験 C75(2026年)

正答:e

問題

68 歳の男性。発熱と腰痛を主訴に来院した。

現病歴 : 1 週間前から腰痛、 5 日前から 38 °C台の発熱が出現した。発熱が持続し、腰痛が増悪してきたため外来を受診した。

既往歴 : 40 歳台から高血圧症で降圧薬を服用している。50 歳時に胃癌で①胃全摘、②脾臓摘出歴がある。 5 年前から慢性腎不全で週に 3 回③血液透析を受けている。

生活歴 : 喫煙は 10 本/日を 40 年間。④飲酒は日本酒2合を毎日。⑤自宅でカメを飼育している。

家族歴 : 母が 70 歳時に胃癌で死亡。

現症 : 意識は清明。身長 160 cm、体重 52 kg。体温 39.6 °C。脈拍 108/分、整。血圧 124/64 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 98 % (room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝を触知しない。腹部正中に手術痕を認める。下腿に浮腫を認めない。下位腰椎に脊椎叩打痛を認める。下肢の筋力低下は認めない。

検査所見 : 血液所見:赤血球 340 万、Hb 12.4 g/dL、Ht 37 %、白血球 11,100 (好中球 88 %、好酸球 1 %、好塩基球 1 %、単球 3 %、リンパ球 7 %)、血小板 23万。血液生化学所見:総蛋白 5.9 g/dL、アルブミン 2.6 g/dL、総ビリルビン 0.4 mg/dL、 AST 15 U/L、 ALT 11 U/L、 ALP 82 U/L (基準 38〜113)、 γ‐GT 11 U/L (基準 13〜64)、CK 50 U/L(基準 59〜248)、尿素窒素 40 mg/dL、クレアチニン3.7 mg/dL、尿酸 2.2 mg/dL、血糖 110 mg/dL、HbA1c 5.8 % (基準 4.9〜6.0)、Na 143 mEq/L、K 3.5 mEq/L、Cl 102 mEq/L。CRP 14 mg/dL。胸部エックス線写真で心胸郭比 51 %、両側肺野に浸潤影を認めない。腰椎単純 MRI の脂肪抑制T 2 強調矢状断像(別冊No. 7A)を別に示す。受診時に採取した血液培養が陽性と(別冊No. 7B)なった。血液培養ボトル内容の Gram 染色標本を別に示す。入院となり抗菌薬治療を開始した後も発熱が持続し、患者が下肢の動かしづらさを訴えたため病棟で診察を行った。下肢の筋力低下を確認し、直腸指診も行った。

直腸指診を行う際に、特に確認すべき所見はどれか。

a.血便

b.直腸の腫瘤

c.前立腺の腫大

d.肛門周囲の圧痛

e.肛門括約筋の筋緊張低下

下位腰椎の椎間板と隣接椎体に高信号を認める脂肪抑制T2強調矢状断像
別冊No.7A:腰椎MRI / 出典:厚生労働省・第120回C別冊(原本の該当ページ)
集簇する紫色の球菌を示すGram染色像
別冊No.7B:血液培養のGram染色 / 出典:厚生労働省・第120回C別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

抗菌薬治療中にも発熱が続き、新たな下肢筋力低下が出現しています。硬膜外膿瘍などに伴う神経圧迫、特に馬尾障害を疑い、仙髄神経機能を反映する肛門括約筋の緊張低下を確認するためeが適切です。直腸診だけで神経圧迫を除外できるものではありません。

各選択肢の検討

a.血便:消化管出血の評価であり、今回の新しい下肢麻痺に対応する主な確認所見ではありません。

b.直腸の腫瘤:重要な直腸診所見ですが、今回の神経障害の評価としてはeを選びます。

c.前立腺腫大:排尿障害の鑑別になりますが、急な下肢麻痺で優先する所見は神経機能です。

d.肛門周囲圧痛:局所炎症などを評価する所見で、馬尾障害の中心的な確認項目ではありません。

e.肛門括約筋緊張低下:仙髄・馬尾の機能障害を示唆し、正答です。

覚えるポイント

筋力、感覚、会陰部感覚、排尿・排便機能などを確認し、緊急画像評価と脊椎外科への相談を進めます。麻痺が進行している場合に、抗菌薬だけで経過を見ることは避けます。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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