第120回医師国家試験 C62(2026年)
正答:e
問題
28 歳の女性。右下肢の脱力を主訴に来院した。
現病歴 : 8 年前に左眼がかすんで見えたが、自然に軽快した。 7 日前に右下肢の脱力を自覚した。 5 日前から、お風呂に入ったとき、お湯の温かさを左下肢で感じなくなった。 2 日前から、走れなくなったため受診した。
既往歴 : 特記すべきことはない。
生活歴 : 職業は看護師。夫と 2 人暮らし。喫煙は 10 本/日を 8 年間。飲酒歴はない。
家族歴 : 母が橋本病。
現症 : 意識は清明。身長 162 cm、体重 52 kg。体温 36.6 °C。脈拍 84/分、整。血圧 110/62 mmHg。呼吸数 16/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。皮疹を認めない。視力は右 0.6 (1.0 × ‐1.5 D)、左 0.8(1.2 × ‐1.0 D)。視野に異常を認めない。瞳孔径と眼裂に左右差はなく、眼球陥凹を認めない。他の脳神経も異常を認めない。四肢筋力は、両上肢と左下肢は正常、右下肢は徒手筋力テストで 3 〜 4 の筋力低下を認める。腱反射は右下肢で亢進し、右 Babinski 徴候が陽性である。鼻指鼻試験、手回内・回外試験で異常を認めない。左下肢で温痛覚が低下しているが、振動覚、関節位置覚に異常を認めない。右下肢で振動覚、関節位置覚が低下しているが、温痛覚に異常を認めない。両上肢では感覚に異常を認めない。排尿と排便に異常を認めない。
検査所見 : 血液所見:赤血球 460 万、Hb 12.2 g/dL、Ht 40 %、白血球 5,300、血小板 23 万。血液生化学所見:総蛋白 7.0 g/dL、アルブミン 4.2 g/dL、総ビリルビン 0.8 mg/dL、AST 21 U/L、ALT 17 U/L、LD 145 U/L (基準 124〜222)、尿素窒素 13 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、血糖 90 mg/dL、HbA1c 5.3 % (基準4.9〜6.0)、 Na 140 mEq/L、 K 4.2 mEq/L、 Cl 102 mEq/L。 免疫血清学所見: CRP 0.1 mg/dL、 MPO‐ANCA 2.0 U/mL(基準 3.5 未満)、 PR 3‐ANCA 1.0 U/mL(基準 3.5 未満)、抗アクアポリン 4 抗体陰性。脳脊髄液所見:初圧90 mmH2O(基準 70〜170)、細胞数 1 /mm³(基準 0〜2) (すべて単核球)、糖(定量) 60 mg/dL(基準 50〜75)、蛋白(定量)62 mg/dL (基準 15〜45)。頭部単純 MRI の FLAIR 像(別冊No. 4)を別に示す。同時に行われた頭部造影MRI では異常な造影効果を認めた。
診断のために追加すべき検査はどれか。
a.FDG‐PET
b.脳波検査
c.脳血管造影検査
d.ドパミントランスポーター SPECT
e.脳脊髄液検査(オリゴクローナルバンド)別冊No. 4


正答の理由
過去の視神経障害を疑うエピソード、今回の脊髄症状、頭部MRIの多発白質病変から多発性硬化症を考えます。髄液オリゴクローナルバンドは髄腔内の免疫グロブリン産生を示す所見で、診断を補助するためeが適切です。陽性だけで多発性硬化症と断定する検査ではありません。
画像の見方
FLAIR像で側脳室周囲や両側大脳白質に多発する高信号を認めます。掲載画像は単純FLAIRであり、造影効果があるという情報は問題文から得られます。この画像だけから造影病変の位置を断定しません。
各選択肢の検討
a.FDG-PET:本例でまず追加する診断検査としては髄液検査が適切です。
b.脳波:てんかんなどの評価に用い、今回の脱髄疾患の診断補助としては選びません。
c.脳血管造影:血管病変の評価に用いますが、提示された再発性症状と白質病変からはeを選びます。
d.ドパミントランスポーターSPECT:黒質線条体系の評価であり、今回の病態には対応しません。
e.髄液オリゴクローナルバンド:多発性硬化症の診断を補助する検査で、正答です。
覚えるポイント
病歴、神経所見、脳・脊髄MRI、髄液所見を組み合わせて診断します。AQP4抗体陰性だけでNMOSDなど他疾患を完全に除外するものではありません。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。