眼部打撲後の上転障害と複視から眼窩底骨折を疑う|第120回医師国家試験B43

第120回医師国家試験 B43(2026年)

正答:e

問題

15 歳の男子。顔面の痛みを主訴に救急車で搬入された。

現病歴 : 野球の試合中に打球が左眼周囲に当たり、顔面の痛みを訴えた。受傷時の意識消失はなく、受傷前後の記憶障害もない。

既往歴 : 特記すべきことはない。

生活歴 : 特記すべきことはない。

家族歴 : 父親に高血圧症。

現症 : 意識は清明。身長 166 cm、体重 45 kg。体温 36.8 °C。心拍数 96/分、整。血圧 102/60 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 98 % (room air)。眼位は正中で瞳孔不同もないが複視を認める。左眼の眼球運動で上転障害を認めた。眼周囲に擦過傷を認めるが明らかな活動性の出血を認めない。鼻の変形と鼻出血は認めない。開口障害と咬合異常は認めない。左眼周囲の感覚の低下を認めるが、その他の神経学的所見に異常は認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。明らかな四肢麻痺を認めない。

検査所見 : 血液所見:赤血球 460 万、Hb 14.6 g/dL、Ht 42 %、白血球 6,800、血小板 28 万。血液生化学所見:総蛋白 6.0 g/dL、アルブミン 3.4 g/dL、総ビリルビン 0.5 mg/dL、 AST 21 U/L、 ALT 11 U/L、 LD 225 U/L (基準 124〜222)、CK 120 U/L(基準 59〜248)、尿素窒素 10 mg/dL、クレアチニン 1.0 mg/dL、尿酸6.3 mg/dL、 血糖 98 mg/dL、 Na 138 mEq/L、 K 4.4 mEq/L、 Cl 106 mEq/L。CRP 0.9 mg/dL。

この時点で最も考えられる診断はどれか。

a.脳震盪

b.下顎骨折

c.脊髄損傷

d.鼻骨骨折

e.眼窩底骨折

正答の理由

打球による左眼周囲の外傷後に複視と上転障害、周囲の感覚低下があり、eの眼窩底骨折を疑います。眼窩底の骨折部へ眼窩組織が嵌頓すると眼球運動が制限され、眼窩下神経の障害で感覚低下を伴うことがあります。この時点では画像や手術所見がないため、特定の筋の嵌頓を確定したとは扱いません。

各選択肢の検討

a.脳震盪:意識消失や健忘がなくても完全に除外できるわけではありませんが、今回の局所的な上転障害と複視を説明する最も適切な診断ではありません。

b.下顎骨折:開口障害や咬合異常などを重視しますが、今回の主所見は眼球運動障害です。

c.脊髄損傷:明らかな四肢麻痺はなく、局所の眼球運動障害を説明する病変ではありません。

d.鼻骨骨折:鼻の変形や鼻出血はなく、複視と上転障害の主な説明にもなりません。

e.眼窩底骨折:眼部への鈍的外力に続く複視、上転障害、感覚低下と合致し、正答です。

覚えるポイント

眼窩外傷では視力、瞳孔、眼球運動、複視、感覚を評価し、必要なCTなどで確認します。小児・若年者で外眼筋の嵌頓が疑われる場合は、外見の腫れが軽くても迅速な専門診療が必要です。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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