感冒様症状に続く循環破綻から急性心筋炎を考える|第120回医師国家試験B32

第120回医師国家試験 B32(2026年)

正答:a

問題

62 歳の男性。心肺停止状態で救急搬入された。約 1 週間前から感冒様症状があり、自宅近くの診療所で治療をうけていた。午前 8 時ごろ散歩に出たところ、自宅前で意識消失した。一緒にいた家族が救急車を要請し、心肺蘇生を行っていた。救急隊の接触時には心室細動で、除細動を試みるも効果はなく、病院到着時も心室細動であった。救急外来で気管挿管を行い、カテーテル検査室に移動して、緊急で経皮的心肺補助〈PCPS〉により循環動態を維持した。心エコー検査では、左室壁はやや浮腫状で、ほぼ無収縮であった。冠動脈造影検査で冠動脈に有意狭窄を認めず、心筋生検を行い、 ICU へ入室となった。 血液所見:Hb 12.3 g/dL、 白血球11,800、血小板 32 万。血液生化学所見:総ビリルビン 1.4 mg/dL、AST 1,254 U/L、 ALT 281 U/L、 LD 2,390 U/L (基準 124〜222)、 CK 29,099 U/L (基準 59〜 248)、 尿素窒素 39 mg/dL、 クレアチニン 1.4 mg/dL、 Na 131 mEq/L、 K 4.4 mEq/L。BNP 1,824 pg/mL(基準 18.4 以下)、心筋トロポニン T 3,240 ng/mL (基準 0.01 以下)。CRP 5.8 mg/dL。最も考えられる疾患はどれか。

a.急性心筋炎

b.急性心膜炎

c.急性心筋梗塞

d.肥大型心筋症

e.たこつぼ心筋症

正答の理由

感冒様症状の約1週間後に難治性心室細動を発症し、左室は浮腫状でほぼ無収縮、心筋傷害マーカーも上昇しています。冠動脈に有意狭窄がないことを合わせると、aの急性心筋炎が最も考えられます。補助循環を必要とする重篤な経過は劇症型の心筋炎を示唆しますが、病理学的な種類や原因ウイルスは提示情報だけでは決定できません。

各選択肢の検討

a.急性心筋炎:先行感染様症状、心筋浮腫、重度の収縮障害と致死性不整脈を説明でき、正答です。

b.急性心膜炎:心膜の炎症が主体です。心筋炎の合併はあり得ますが、今回の著明な心筋傷害と収縮障害を説明する主病態は心筋炎です。

c.急性心筋梗塞:心筋傷害マーカー上昇だけでは確定できません。冠動脈所見とびまん性の重度機能障害、先行症状から心筋炎を優先します。

d.肥大型心筋症:慢性的な心筋肥厚を中心とする病態で、今回の浮腫状変化と急激な経過には合いません。

e.たこつぼ心筋症:冠動脈に有意狭窄がない点は共通しますが、典型的な局所壁運動異常の記載がなく、先行感染と心筋浮腫を伴う本例ではaが適切です。

覚えるポイント

急性心筋炎は胸痛だけでなく、急性心不全、ショック、心室性不整脈で発症することがあります。心エコー、冠動脈評価、心筋生検などを病状に応じて組み合わせて診断します。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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