第120回医師国家試験 B31(2026年)
正答:b
問題
45 歳の女性。左手の疼痛と腫脹を主訴に来院した。昨夜、飼い猫に左手関節付近をかまれた。今朝は創が小さく出血も止まっていたため出勤し、事務作業を行った。昼ごろから疼痛が増悪し、夕方になり疼痛と腫脹で手指が動かせなくなったため受診した。左手関節の伸側と屈側に径 3 〜 5 mm の創を 2 か所認める。左手背は腫脹し、発赤を肘関節付近まで認める。左の手指は全体的に腫脹し、疼痛で伸展が困難であった。実施すべきでない処置はどれか。
a.創の洗浄
b.創の縫合
c.抗菌薬の投与
d.左上肢の安静
e.破傷風トキソイドの投与
正答の理由
猫の咬傷は入口が小さくても深部まで達し、感染を起こしやすい創です。本例は発赤・腫脹が広がり、手指の運動も困難で、すでに感染が成立していると考えます。創を縫合して閉鎖すると排液を妨げるため、bは実施すべきでない処置です。深部感染を評価し、洗浄・必要な外科的処置と抗菌薬治療を行います。
各選択肢の検討
a.創の洗浄:汚染物や細菌量を減らすために重要な処置です。
b.創の縫合:このような感染を伴う手の猫咬傷を直ちに閉鎖するのは不適切で、正答です。
c.抗菌薬:感染所見があるため必要です。動物の口腔内細菌を考慮し、重症度や深部への波及に応じた治療を選びます。
d.左上肢の安静:局所の負担を減らすために行います。安静だけで感染治療が完結するわけではありません。
e.破傷風トキソイド:汚染創として接種歴を確認し、必要な予防を行います。既接種回数や最終接種時期によって、トキソイドや免疫グロブリンの適応を判断します。
覚えるポイント
小さな咬創でも感染が軽いとは限りません。手では腱鞘や関節などへの波及に注意します。あらゆる動物咬傷を例外なく縫合禁止とするのではなく、この設問は感染した手の猫咬傷である点が重要です。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。