第120回医師国家試験 A43(2026年)
正答:d
問題
77 歳の女性。つかえ感を主訴に来院した。15 年前から食物摂取時に胸のつかえ感が時々あった。 3 か月前から食後に嘔吐を起こすようになり受診した。意識は清明。 身長 148 cm、 体重 40 kg。 体温 36.7 °C。 脈拍 72/分、 整。 血圧 104/74 mmHg。呼吸数 14/分。SpO2 98 % (room air)。眼瞼結膜は軽度貧血様で、眼球結膜に黄染を認めない。甲状腺は触知しない。頸部リンパ節の腫大を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。血液所見:赤血球 352 万、Hb 10.7 g/dL、Ht 31 %、白血球 8,700、血小板 20 万。血液生化学所見:アルブミン 3.3 g/dL、総ビリルビン 1.2 mg/dL、AST 31 U/L、ALT 22 U/L、LD 231 U/L(基準 124〜222)、CK 50 U/L (基準 41〜153)、尿素窒素 30 mg/dL、クレアチニン 1.1 mg/dL、Na 136 mEq/L、K 5.1 mEq/L、Cl 99 mEq/L。CRP 0.8 mg/dL。上部消化管造影検査の食道像(別冊No. 17)を別に示す。考えられる疾患はどれか。
a.食道癌
b.食道憩室
c.食道静脈瘤
d.食道アカラシア
e.食道裂孔ヘルニア別冊No. 17

正答の理由
長年続く食物のつかえ感と食後の嘔吐に加え、食道造影では食道拡張と下端の平滑な先細りを認めます。下部食道括約筋の弛緩不全と食道の蠕動障害を来す食道アカラシアを考えます。高齢者で症状が悪化しているため、実際の診療では内視鏡などで悪性腫瘍による通過障害も除外することが重要です。
画像の見方
造影剤のたまった食道が拡張し、食道胃接合部へ向かって平滑に細くなるbird beak様の形態です。不整な壁を伴う限局性狭窄よりアカラシアに合う所見です。静止画だけでは蠕動の欠如や内圧測定上の病型を判定できません。
各選択肢の検討
a.食道癌:通過障害の原因として除外が必要ですが、今回の平滑な先細りと長い経過からはアカラシアを優先します。
b.食道憩室:食道壁から外側へ突出する袋状の造影所見が手掛かりです。本画像の主所見とは異なります。
c.食道静脈瘤:蛇行する隆起による造影欠損などを示します。下端の平滑な先細りと食道全体の拡張を説明する第一候補ではありません。
d.食道アカラシア:食道拡張と食道胃接合部の平滑な狭窄、つかえ感、逆流・嘔吐の組合せに合致します。
e.食道裂孔ヘルニア:胃の一部が食道裂孔を通って胸腔内へ移動する病態で、この画像に示される主要所見とは異なります。
覚えるポイント
食道アカラシアでは、症状と造影・内視鏡所見を評価し、食道内圧検査で運動機能を詳しく調べます。造影像が典型的でも、悪性腫瘍による偽性アカラシアの除外を忘れないことが重要です。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。