第117回医師国家試験 C60(2023年)
正答:採点対象から除外(公式正答なし)
問題
76歳の男性。食欲不振と倦怠感を主訴に来院した。
現病歴:1週間前から倦怠感と水様便(1日2回〜4回)が出現した。食欲がなく、おかゆを無理に食べている。悪心はあるが嘔吐、腹痛、黒色便および血便はない。体重が3 kg減少した。37 ℃台の微熱があるが悪寒戦慄はない。
既往歴:高血圧症でカルシウム拮抗薬を内服している。アレルギーなし。
生活歴:妻と2人暮らし。喫煙は20歳から40本/日。飲酒歴はない。
家族歴:兄が60歳台で大腸癌。
現症:意識は清明だがややぐったりしている。身長166 cm、体重69 kg。体温37.5 ℃。脈拍104/分、整。血圧86/50 mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96%(room air)。皮膚は乾燥し、色素沈着を認めない。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内は乾燥しており咽頭発赤はない。頸静脈の怒張を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛はなく、肝・脾を触知しない。四肢末梢は冷たいがチアノーゼや浮腫を認めない。ばち指を認める。
検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖(−)、潜血(−)。血液所見:赤血球437万、Hb 12.3 g/dL、Ht 34%、白血球5,400(好中球45%、好酸球21%、好塩基球1%、単球9%、リンパ球24%)、血小板23万。血液生化学所見:総蛋白6.3 g/dL、アルブミン3.7 g/dL、総ビリルビン0.5 mg/dL、直接ビリルビン0.2 mg/dL、AST 43 U/L、ALT 78 U/L、LD 169 U/L(基準120〜245)、ALP 200 U/L(基準38〜113)、γ-GT 96 U/L(基準8〜50)、CK 100 U/L(基準30〜140)、尿素窒素11 mg/dL、クレアチニン1.0 mg/dL、尿酸3.7 mg/dL、血糖92 mg/dL、Na 118 mEq/L、K 4.6 mEq/L、Cl 89 mEq/L、Ca 8.4 mg/dL。血清浸透圧240 mOsm/L(基準275〜288)、尿浸透圧572 mOsm/L(基準50〜1,300)、尿中Na 84 mEq/L。胸部エックス線写真(別冊No.9A)と胸腹部造影CT(別冊No.9B、C)を別に示す。
この患者の電解質異常の鑑別に有用な検査はどれか。2つ選べ。
a.プロラクチン
b.ACTHとコルチゾール
c.副甲状腺ホルモン〈PTH〉
d.レニン・アルドステロン比
e.TSHと遊離サイロキシン〈FT4〉



正答の理由
この問題は公式に採点対象から除外されています。公式理由は「問題として適切であるが、受験者レベルでは難しすぎるため」です。以下は医学的な参考解説です。Na 118 mEq/Lと低い血清浸透圧から低張性低Na血症があり、肺病変に伴うSIADHだけに決め付けず、副腎不全や甲状腺機能低下、循環血漿量減少等を検討します。
画像の見方
胸部写真では左肺門から上縦隔の輪郭が外側へ張り出し、胸部CTでも左肺門・縦隔に軟部組織腫瘤を認めます。腹部CTでは副腎相当部にも腫瘤状の軟部陰影を認め、副腎病変の併存を疑います。肺病変と低Na血症からSIADHを考える一方、画像だけで病理型やホルモン分泌能を確定せず、副腎不全等も鑑別します。
各選択肢の検討
a.プロラクチン:参考:プロラクチンは下垂体疾患の評価に使いますが、低Na血症の主要な鑑別検査そのものではありません。
b.ACTHとコルチゾール:参考:副腎不全は低Na血症や低血圧の原因となるため、ACTH・コルチゾールの評価が役立ちます。好酸球増加も副腎不全を考える手掛かりになり得ます。
c.副甲状腺ホルモン〈PTH〉:参考:PTHは主にCa代謝を評価する検査です。
d.レニン・アルドステロン比:参考:この比は主に原発性アルドステロン症のスクリーニングに用い、今回の低張性低Na血症の基本的鑑別とは位置付けが異なります。
e.TSHと遊離サイロキシン〈FT4〉:参考:甲状腺機能低下の有無を評価します。臨床的に重要な低Na血症は、特に重症の甲状腺機能低下で問題となります。
覚えるポイント
公式正答はありません。参考解説で挙げた検査を公式正答とみなさず、低Na血症の診断は浸透圧・尿所見・体液量・内分泌機能を総合して行います。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第117回医師国家試験問題および正答
- 厚生労働省:第117回C60の採点除外と理由
- 欧州関連学会:低Na血症の診断・治療ガイドライン
- Endocrine Society:原発性副腎不全診療ガイドライン
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。