第117回医師国家試験 A16(2023年)
正答:c
問題
72歳の女性。動悸と息切れを主訴に来院した。3週間前から動悸を自覚していたが、1週間前から短距離の歩行で息切れを自覚するようになった。一昨日から夜間就寝後に息苦しさで覚醒するようになったため受診した。15年前から僧帽弁閉鎖不全症、10年前から高血圧を指摘されており、自宅近くの診療所で投薬治療を受けている。来院時、意識は清明。身長153 cm、体重39 kg。脈拍136/分、不整。血圧152/88 mmHg。SpO2 85 % (room air)。心音は心尖部を最強点とするLevine 3/6の収縮期雑音を聴取する。呼吸音は両側下肺野でcoarse cracklesを聴取する。腹部に異常を認めない。両下腿に浮腫を認める。
血液所見:Hb 12.2 g/dL、Ht 38 %、白血球7,800、血小板21万。
血液生化学所見: アルブミン3.3 g/dL、AST 24 U/L、ALT 18 U/L、CK 72 U/L(基準30〜140)、尿素窒素14 mg/dL、クレアチニン1.2 mg/dL、血糖110 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 3.9 mEq/dL、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉588 pg/mL(基準18.4以下)、心筋トロポニンT 0.02 ng/mL(基準0.01以下)。CRP 1.8 mg/dL。12誘導心電図(別冊No.2A)と胸部エックス線写真(別冊No.2B)を別に示す。心エコー検査では僧帽弁逸脱による中等症の僧帽弁閉鎖不全症を認め、左室駆出率は68 %であった。
この患者で誤っているのはどれか。
a.抗凝固療法の適応がある。
b.左室駆出率は正常範囲である。
c.肺動脈楔入圧は低下している。
d.甲状腺機能の評価が必要である。
e.来院時に認めた不整脈は労作時息切れの一因である。


正答の理由
僧帽弁閉鎖不全症を背景に頻脈性心房細動が出現し、肺うっ血、低酸素血症、浮腫、BNP上昇を認めます。左室駆出率が68%と保たれていても左房圧・肺動脈楔入圧は上昇し得るため、低下しているというcが誤りです。
画像の見方
心電図では規則的なP波を認めず、RR間隔が不規則な頻脈で心房細動を示します。胸部X線では心陰影が拡大し、両側の肺門から下肺野にかけて陰影増強があり、肺うっ血を支持します。
各選択肢の検討
a.心不全・高血圧を有する心房細動であり、血栓塞栓症予防のため抗凝固療法の適応があります。
b.68%は通常の左室駆出率の正常範囲です。ただし僧帽弁逆流ではEFだけで心機能を評価しません。
c.誤り。肺うっ血のある本例では左房圧を反映する楔入圧は上昇すると考えます。
d.甲状腺機能亢進症は心房細動の原因・増悪因子となるため評価します。
e.頻脈と心房収縮の消失は充満・心拍出を障害し、息切れや心不全増悪に関与します。
覚えるポイント
EFが正常でも心不全は否定できません。急性期は酸素化・うっ血・循環動態を評価しながら不整脈にも対応します。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。