第116回医師国家試験 E50(2022年)
正答:a
問題
60歳の女性。背部痛と体重減少を主訴に来院した。
現病歴:1か月前から背部痛を自覚していた。市販の外用薬を貼ったりマッサージを受けたりしていたが改善しないため来院した。この3か月間で体重が3 kg減少している。
既往歴:55歳時から高血圧症で降圧薬を服用している。
生活歴:夫と2人暮らし。
家族歴:父が高血圧症、母が高脂血症。
現症:意識は清明。身長155 cm、体重45 kg。体温36.2 °C。脈拍96/分、整。血圧126/80 mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98 %(room air)。眼瞼結膜は蒼白で、眼球結膜に黄染を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音に異常を認めない。腹部は膨満しており、波動を認める。聴診で腸雑音は減弱している。肝・脾を触知しない。両下腿に軽度の浮腫を認める。腱反射は正常である。感覚系に異常を認めない。
検査所見:血液所見:赤血球401万、Hb 10.5 g/dL、Ht 31 %、白血球4,500、血小板29万。血液生化学所見:総蛋白5.9 g/dL、アルブミン2.9 g/dL、総ビリルビン0.9 mg/dL、AST 24 U/L、ALT 22 U/L、LD 363 U/L (基準120〜245)、ALP 146 U/L(基準38〜113)、尿素窒素11 mg/dL、クレアチニン0.7 mg/dL、血糖93 mg/dL、CEA 10.6 ng/mL(基準5以下)、CA19-9 352 U/mL(基準37以下)。腹部超音波検査および腹部CTで膵体部に径10 cmの腫瘤、肝両葉に径1〜2cmの多発する腫瘤陰影を認める。腹水の貯留を認める。
担当医は患者に病状を伝えるために以下のように行動した。
まず、①患者との面談の前に夫に電話で検査結果を伝えた。面談では、②今までの症状について患者の認識を確認した。次に、③患者が今回の検査結果をどこまで知りたいか確認した。その上で、なるべく平易な言葉や図を用いて腹部造影CTの結果を説明した。患者は驚き混乱している様子であったため、④患者の気持ちを察して少し間をとってから声をかけた。最後に、⑤患者の気持ちを傾聴し、共感の態度を示した。
悪い知らせの伝え方について、下線部のうち誤っているのはどれか。
a.①
b.②
c.③
d.④
e.⑤
正答の理由
意識清明な患者について、本人が何を知りたいか、誰への説明を望むかを確認せず、先に夫へ結果を知らせる対応が問題です。本人の理解と希望を確かめ、分かりやすく説明し、反応を待って共感的に応じます。家族への説明自体が常に不適切なのではなく、本人の意向や同意、状況に沿うことが必要です。
各選択肢の検討
a.不適切で正答。本人の希望や家族への情報共有の範囲を確認せず、面談前に夫へ検査結果を伝えている点が問題です。
b.患者が現在どう理解しているかを確認する適切な対応です。
c.知りたい情報の範囲と説明の希望を確認する適切な対応です。
d.驚きや混乱に配慮し、気持ちを受け止める間を設けます。
e.感情を傾聴し、共感を示すことは重要です。
覚えるポイント
説明の主体は患者本人。知りたい範囲と家族への共有の希望を確かめる。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。