第116回医師国家試験 D25(2022年)
正答:a
問題
84歳の男性。胃癌の精査のため入院中である。入院時に左前腕に皮下血腫を認めていたが、その後血腫は左の側胸部、側腹部から大腿部にまで拡大した。これまでに出血症状の既往はなく、家族歴に特記すべきことはない。
意識は清明。体温36.8 ℃。脈拍110/分、整。血圧100/60 mmHg。眼瞼結膜は貧血様で、眼球結膜に黄染を認めない。胸骨右縁第2肋間を最強点とするLevine 2/6の収縮期駆出性雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦で、心窩部に圧痛を認める。肝・脾を触知しない。四肢等体幹に皮下血腫と紫斑を散在性に認める。
血液所見:赤血球298万、Hb 7.2 g/dL、Ht 23 %、白血球7,400、血小板33万、出血時間3分30秒(基準7分以下)、PT-INR 1.0(基準0.9〜1.1)、APTT 70.4秒(基準対照32.2)、血漿フィブリノゲン398 mg/dL(基準186〜355)、血清FDP 5 μg/mL(基準10以下)。
最も考えられる疾患はどれか。
a.後天性血友病
b.ビタミンK欠乏症
c.von Willebrand病
d.抗リン脂質抗体症候群
e.播種性血管内凝固〈DIC〉
正答の理由
出血歴のない高齢者に広範な皮下・軟部組織出血が新たに出現し、血小板数とPTは正常でAPTTだけが著しく延長しています。悪性腫瘍の併存もあり、第Ⅷ因子に対する自己抗体を生じる後天性血友病Aをまず疑います。第Ⅷ因子活性、インヒビター、交差混合試験などで確認し、重い出血には速やかな専門的治療が必要です。
各選択肢の検討
a.正しい。新規の皮下・筋肉内出血とAPTT単独延長が重要です。
b.ビタミンK依存性因子の低下ではPT延長が重要で、本例の正常PTと合いません。
c.粘膜出血等を来しAPTTが延長することもありますが、高齢での新規大出血と悪性腫瘍の併存は後天性血友病をより疑わせます。
d.通常は血栓症や妊娠合併症が主な問題で、広範な出血を伴う本例の説明として劣ります。
e.血小板低下、FDP上昇、凝固因子消費等を伴うことが多く、提示された検査パターンと合いません。
覚えるポイント
出血歴のない高齢者の軟部組織出血+APTT単独延長では後天性血友病Aを疑う。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。