第116回医師国家試験 C65(2022年)
正答:e
問題
62歳の女性。腰痛、発熱および嘔吐を主訴に救急車で搬入された。
現病歴:3日前から間欠的な右腰痛を自覚していた。今朝起床時から悪寒も自覚するようになった。夕刻になり発熱と繰り返す嘔吐も出現し、動けなくなったため救急車を要請した。
既往歴:30年前に子宮筋腫摘出術。
生活歴:夫と二人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:両親が高血圧症であった。
現症:意識レベルはJCSⅠ-1。身長158 cm、体重55 kg。体温38.9 ℃。脈拍110/分、整。血圧88/54 mmHg。呼吸数26/分。SpO2 99 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜に異常を認めない。甲状腺と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。右腰部に叩打痛を認める。腸雑音はやや減弱している。四肢に浮腫を認めない。皮膚には皮疹を認めない。
検査所見:尿所見:黄褐色でやや混濁、比重1.020、pH 5.5、蛋白+、糖(−)、潜血3+、白血球+、ケトン(−)、亜硝酸+。血液所見:赤血球407万、Hb 13.2 g/dL、Ht 38 %、白血球12,600(好中球77 %、好酸球1 %、好塩基球1 %、単球6 %、リンパ球15 %)、血小板13万。血液生化学所見:総蛋白6.3 g/dL、アルブミン4.2 g/dL、総ビリルビン1.0 mg/dL、AST 42 U/L、ALT 40 U/L、LD 228 U/L(基準120〜245)、ALP 105 U/L(基準38〜113)、γ-GT 45 U/L(基準8〜50)、CK 131 U/L(基準30〜140)、尿素窒素24 mg/dL、クレアチニン1.3 mg/dL、血糖120 mg/dL、Na 132 mEq/L、K 3.8 mEq/L、Cl 104 mEq/L、Ca 8.5 mg/dL。CRP 2.2 mg/dL。乳酸2.5 mg/dL(基準5〜20)。動脈血ガス分析(room air):pH 7.43、PaCO2 25 Torr、PaO2 88 Torr、HCO3−16.5 mEq/L。
腹部単純CT(別冊No.9)を別に示す。
抗菌薬投与を含む治療の結果、入院4日目から解熱を認めた。以後順調に回復し抗菌薬治療は合計10日間の計画としていたが、入院8日目になり再度の発熱と腹痛を認めた。入院7日目の看護記録によると、茶褐色の水様下痢が合計8回あった。意識は清明。体温38.2 ℃。血圧90/56 mmHg。脈拍112/分、整。呼吸数20/分。SpO2 98 %(room air)。腹部は全体に圧痛を認め、やや膨隆している。腸雑音は減弱している。腰部叩打痛は認めない。
この時点で実施すべき検査はどれか。
a.心電図
b.尿培養
c.脳脊髄液検査
d.便潜血
e.便中CDトキシン

正答の理由
尿路感染が一度改善した後、抗菌薬使用中に頻回の水様下痢、腹痛、再発熱が出現し、C. difficile感染症を疑います。症状のある患者の下痢便でトキシン等を調べます。実際にはGDH抗原、トキシン検査、必要に応じてNAATを組み合わせる検査法があり、単独のトキシン陰性だけで除外しません。低血圧と腹部膨隆を伴うため、検査と並行して全身状態・重症度を評価します。
画像の見方
上段で右腎の腎盂・腎杯が拡張し、下段では右尿管膀胱移行部付近に高吸収の結石がみられます。右の尿路閉塞に、発熱・右腰部叩打痛・膿尿が加わり、閉塞性腎盂腎炎を考えます。 ただし入院8日目の下痢・腹痛の原因をこの入院時CTだけで診断することはできません。
各選択肢の検討
a.循環評価で必要になることはありますが、新たな下痢・腹痛の原因を調べる検査ではありません。
b.尿路感染再燃の鑑別で必要な場合はありますが、今回の特徴は抗菌薬後の頻回水様下痢です。
c.髄膜刺激症状や意識障害などを示さず、最優先の原因検索ではありません。
d.消化管出血を調べる検査で、C. difficile感染の診断には対応しません。
e.正しい。抗菌薬曝露後の下痢便でC. difficileトキシン等を調べます。
覚えるポイント
抗菌薬後の頻回水様下痢・発熱・腹痛ではC. difficile感染を疑う。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。