第115回医師国家試験 E44(2021年)
正答:b
問題
84歳男性。発熱と左側胸部痛を主訴に来院した。
現病歴:5日前から咽頭痛と37 ℃前後の微熱があり、市販の感冒薬を内服したが発熱は持続していた。2日前から徐々に左側胸部の持続性の疼痛が出現した。痛みは呼吸に伴い増悪する。今朝になって、左側胸部痛が強くなっており心配になって受診した。冷汗や意識消失はない。
既往歴:徐脈性心房細動、Ⅱ度の僧帽弁閉鎖不全、心不全、高血圧症で、抗血栓薬とアンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬、利尿薬を内服中である。5年前に徐脈性心房細動に対し、ペースメーカー植込み術を受けた。
家族歴:父が85歳時に脳出血で死亡。母が80歳時に胃癌で死亡。
現症:意識は清明。身長158 cm、体重56 kg。体温37.6 ℃。脈拍60/分、整。血圧120/80 mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98 %(room air)。左下胸部に、打診で濁音、聴診で呼吸音の減弱および胸膜摩擦音を認める。胸部に圧痛を認めない。心音は、Ⅲ音と心尖部を最強とするLevine3/6の全収縮期雑音を聴取する。心電図(別冊No. 6A)及び胸部エックス線写真(別冊No. 6B)を別に示す。
検査結果を示す。
検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖(−)。血液所見:赤血球450万、Hb 13.3 g/dL、Ht 40 %、白血球9,800(桿状核好中球2%、分葉核好中球58 %、好酸球3 %、好塩基球1%、単球8 %、リンパ球28 %)、血小板18万。血液生化学所見:AST 36 U/L、ALT 38 U/L、LD 263 U/L(基準120〜245)、CK 88 U/L(基準30〜140)、尿素窒素12 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL。CRP 8.2 mg/dL。
考えられるのはどれか。
a.気胸
b.胸膜炎
c.大動脈解離
d.肺血栓塞栓症
e.ウイルス性心筋炎


正答の理由
発熱に続く呼吸性の胸痛、胸膜摩擦音、左下胸部の濁音・呼吸音減弱があり、胸部写真でも左胸水が示唆されます。炎症反応上昇を合わせて胸膜炎と判断します。胸水の原因は感染以外にもあるため、臨床的には画像や胸水検査などで原因を評価します。
画像の見方
心電図は約60/分の規則的な心室ペーシングで、細い刺激スパイクと幅広いQRSを認めます。胸部写真ではペースメーカーとリードを確認でき、左下肺野の濃度上昇・肋骨横隔膜角の鈍化が胸水を示唆します。発熱、呼吸性胸痛、胸膜摩擦音と合わせて胸膜炎を考えます。
各選択肢の検討
a.通常は打診で過共鳴となり、胸部写真の胸水所見とも異なります。
b.正しい。呼吸性疼痛と胸膜摩擦音が胸膜の炎症を示します。
c.突然の激烈な胸背部痛を主とする病歴ではなく、提示された炎症性の経過とは合いにくい疾患です。
d.呼吸性胸痛や胸水を来すことはありますが、本例は先行感染症状・局所胸膜所見から胸膜炎が最も適合します。
e.炎症反応だけでは心筋炎とは診断せず、胸膜摩擦音と局所胸水を重視します。
覚えるポイント
呼吸に伴う痛み、胸膜摩擦音、胸水を組み合わせる。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。