第114回医師国家試験 E46(2020年)
正答:a
問題
20歳の男性。医学部在籍中の2年次学生である。1週間の病院実習に初めての参加を予定しており、10か月前(1年次)に受けた抗体検査の結果を持って病院実習担当の医師に相談に来た。
既往歴:感染症の既往はないという。予防接種で発熱などの副反応が出たことはない。
生活歴:喫煙歴と飲酒歴はない。
家族歴:特記すべきことはない。
検査所見:10か月前の抗体検査の報告書を示す。
血中抗体価報告書
| 測定方法 | 検査結果 | 病院実習の基準を満たす陽性 | 単位 | |
|---|---|---|---|---|
| 麻疹 | (IgG-EIA法) | 20.4 | (≧16.0) | |
| 風疹 | (IgG-EIA法) | 10.0 | (≧8.0) | |
| 水痘 | (IgG-EIA法) | 6.4 | (≧4.0) | |
| 流行性耳下腺炎 | (IgG-EIA法) | 陽性 | 陽性 | |
| B型肝炎 | (CLIA法) | 4.8 | (≧10.0) | mIU/mL |
| 結核 | (IGRA)* | 陰性 | 陰性 |
* 結核菌特異的全血インターフェロンγ遊離測定法
その後の経過:相談に来た学生は医学部を卒業し、5年後に研修医として同じ大学病院で勤務を始めた。この研修医が平日に救急外来で勤務していたところ、54歳の男性が自転車の転倒による挫創のため来院した。初診患者でこの病院に受診歴はない。この研修医が創部の縫合処置を行っている最中、誤って縫合針を自分の指に刺した。研修医は創部から血を絞り出し流水で十分に洗浄すると同時に、直ちに研修医自身と患者の血液検査を行った。
外傷患者の血液検査結果が陽性だった場合、できるだけ早期に研修医に対する内服予防投与の開始が必要なのはどれか。
a.HIV
b.HBV
c.HCV
d.梅毒
e.HTLV-1
正答の理由
HIVへの血液曝露が疑われる針刺し事故では、曝露の状況を評価して抗HIV薬の曝露後予防内服〈PEP〉をできるだけ早く開始します。開始までの時間が重要であり、専門家への相談を進めながら対応します。原文には血液を絞り出す記載がありますが、現在の対応では絞り出すことは推奨されず、流水と石けんによる洗浄を行います。
各選択肢の検討
a.正しい。HIV曝露後は原則として72時間以内、できるだけ早期に予防内服を開始します。72時間まで待ってよいという意味ではありません。
b.本問では選ばない。B型肝炎も重要な血液媒介感染症ですが、曝露後はワクチン接種歴・抗体価などに応じてワクチンや抗HBs人免疫グロブリンを検討します。本問の早期の内服予防との対応はHIVです。
c.本問では選ばない。曝露後の検査と経過観察が重要で、HCV感染を予防するための内服を一律に開始する対応ではありません。
d.本問では選ばない。梅毒の評価・治療が不要という意味ではありません。現在の一部集団に対する性行為後のドキシサイクリン予防内服と、本問の職業性針刺し事故への対応は区別します。
e.本問の2020年公式正答はHIVです。HTLV-1曝露後予防の臨床的有効性は確立していません。ただし現在は、重大な職業曝露で抗ウイルス薬による予防を勧める専門家もおり、専門施設への相談・個別検討を否定するものではありません。
覚えるポイント
針刺し事故のHIV曝露後予防内服は時間を失わず開始する。HBVのワクチン・免疫グロブリンとは区別する。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第114回医師国家試験問題および正答
- ACC:血液・体液曝露後予防内服と針刺し事故への対応
- 厚生労働省研究班:抗HIV治療ガイドライン2026・血液体液曝露時の直後の対応
- CDC:医療従事者のHBV曝露後対応
- CDC:医療従事者のHCV曝露と予防投薬
- CDC2024:性行為後doxy PEPの対象と条件
- UKHSA2026:HTLV-1職業曝露後予防の未確立性と専門家判断
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。