第114回医師国家試験 D71(2020年)
正答:a・c
問題
80歳の女性。今朝、自室で倒れているのを家人に発見され、救急車で搬入された。1週前から38 ℃の発熱、鼻汁および咽頭痛を訴えていたが、食事も摂れていたので医療機関は受診せずに様子をみていた。昨日の夕食も通常通りに摂取して就寝したが、朝食時に起きてこないので家人が様子を見に行ったところ自室で倒れていたという。30年前から2型糖尿病に対して経口糖尿病薬を内服している。
意識レベルはJCSⅢ-100。身長152 cm、体重42 kg。体温37.8 ℃。心拍数104/分、整。血圧88/46 mmHg。呼吸数18/分。左上下肢の不全麻痺と右下肢のけいれんを認める。皮膚、口腔粘膜は著明な乾燥を認める。
尿所見:蛋白(±)、糖4+、ケトン体(−)。血液生化学所見:尿素窒素60 mg/dL、クレアチニン2.4 mg/dL、血糖1,160 mg/dL、HbA1c 6.6%(基準4.6〜6.2)、Na 156 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 116 mEq/L。
直ちに静注すべきなのはどれか。2つ選べ。
a.インスリン
b.血栓溶解薬
c.生理食塩液
d.抗けいれん薬
e.7%重炭酸ナトリウム
正答の理由
著明な高血糖、脱水・低血圧、意識障害と尿ケトン陰性から高浸透圧高血糖状態(HHS)を考えます。有効血漿浸透圧の概算は2×156+1,160÷18=約376 mOsm/kgです。公式正答はインスリンと生理食塩液です。臨床では循環回復のため等張液を開始し、カリウムや腎機能・浸透圧を監視しながらインスリンを調整します。脱水の補正より先にインスリンを急速投与するという意味ではありません。
各選択肢の検討
a.正しい。高血糖を是正します。輸液と電解質評価を行い、血糖・浸透圧を急激に下げないよう静脈内持続投与を調整します。
b.誤り。HHSでも局所神経症状を来します。画像等で適応を確認せず血栓溶解薬を投与してはいけません。
c.正しい。高度な循環血液量減少を補正します。高齢者なので心腎機能や反応を確認し投与量・速度を調整します。
d.本問では選ばない。まず高浸透圧・脱水の是正が必要です。持続する発作や気道障害には別途抗けいれん治療を行う場合があります。
e.誤り。重炭酸が必要な重度アシドーシスの情報はなく、HHSに一律投与しません。
覚えるポイント
HHSは輸液・インスリン・電解質管理が中心。インスリン開始の順序と浸透圧の急変に注意する。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。