第114回医師国家試験 D47(2020年)
正答:d
問題
72歳の女性。幻視を主訴に長女に伴われて受診した。1週前に「家に来ていた孫が急にいなくなった」と長女に電話した。長女によれば孫が来ているはずはないが「朝起きて居間に行くと、孫が黙って座っている姿が見えた。一生懸命勉強をしているようなので声をかけずにそっとしておいた。孫が家の中を歩いているのを見たが、こちらから呼ぶといなくなっていた」と述べた。
数年前から長女の家に泊まった際に、夜中に寝言を言ったり笑ったりするのに気付かれていた。本人は「夢を見ていた」と述べることが多かった。半年ほど前から動作の緩慢が目立つようになっていたという。
問診時の感情表出は自然であり礼節は保たれ、時間や場所の見当識に問題はなかった。血液検査と脳波検査とに異常を認めない。頭部MRIでは軽度の脳萎縮を認める以外に異常所見は認めない。
考えられるのはどれか。
a.妄想性障害
b.血管性認知症
c.前頭側頭型認知症
d.Lewy小体型認知症
e.Alzheimer型認知症
正答の理由
実在しない孫を具体的な姿で繰り返し見る幻視、REM睡眠行動異常を疑う睡眠時の言動、動作緩慢の組合せからLewy小体型認知症を考えます。早期には記憶や見当識の障害が目立たないこともあります。実臨床では認知機能と生活機能の低下、他の原因や薬剤の影響も評価して診断します。ただし、認知症としての診断には日常生活に支障を来す認知機能低下の確認が必要で、この提示情報だけで厳密な診断基準を満たすとまでは断定できません。
各選択肢の検討
a.選ばない。妄想のみの病態ではなく、具体的な幻視に睡眠時の異常行動とパーキンソニズムを疑う所見が伴います。
b.選ばない。脳血管病変や脳卒中との時間的な関連を示す情報がなく、MRIにも説明できる病変がありません。
c.選ばない。早期の脱抑制・人格変化・常同行動や言語障害を中心とする像ではありません。
d.正しい。幻視、REM睡眠行動異常、動作緩慢の組合せが特徴的です。見当識が保たれることだけでは否定できません。
e.選ばない。典型的には近時記憶障害が前景に立ちます。本例の幻視・睡眠・運動の組合せはLewy小体病をより支持します。
覚えるポイント
具体的な反復性幻視に、夢に伴う異常行動と動作緩慢が重なればLewy小体病を考える。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第114回医師国家試験問題および正答
- 米国国立医学図書館MedlinePlus Genetics:Dementia with Lewy bodies・Description
- DLB Consortium 2017:診断に必要な認知症と中核的臨床特徴
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。