第113回医師国家試験 F80(2019年)
正答:c
問題
67歳の男性。突然の嚥下困難のため救急車で搬入された。
現病歴:本日、昼食中に突然、後頭部痛、めまい及び悪心を感じて嘔吐した。しばらく横になり様子をみていたが、帰宅した妻から声を掛けられ返答したところ、声がかすれて話しにくいことに気が付いた。水を飲もうとしたがむせて飲めなかった。心配した妻が救急車を要請した。
既往歴:40歳から高血圧症。
生活歴:妻と2人暮らし。喫煙は10本/日を45年間。飲酒は機会飲酒。
現症:意識は清明。身長165 cm、体重60 kg。体温36.6 ℃。心拍数72/分、整。血圧160/90 mmHg。呼吸数12/分。SpO2 97 %(マスク4 L/分酸素投与下)。甲状腺腫と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察では、眼球運動に制限はなく複視はないが、構音障害と嚥下障害を認める。左上下肢の温痛覚が低下している。腱反射に異常を認めず、Babinski徴候は陰性である。
検査所見:血液所見:赤血球452万、Hb 13.1 g/dL、Ht 40 %、白血球5,300、血小板32万。血液生化学所見:総蛋白8.1 g/dL、アルブミン4.2 g/dL、総ビリルビン1.0 mg/dL、AST 15 U/L、ALT 18 U/L、LD 280 U/L(基準176〜353)、ALP 213 U/L(基準115〜359)、γ-GTP 18 U/L(基準8〜50)、CK 50 U/L(基準30〜140)、尿素窒素20 mg/dL、クレアチニン0.7 mg/dL、尿酸4.2 mg/dL、血糖82 mg/dL、トリグリセリド185 mg/dL、HDLコレステロール40 mg/dL、LDLコレステロール200 mg/dL、Na 145 mEq/L、K 3.9 mEq/L、Cl 104 mEq/L。CRP 0.2 mg/dL。頭部MRI拡散強調像(別冊No.14)を別に示す。
この患者でみられる可能性が高いのはどれか。
a.左小脳性運動失調
b.左顔面温痛覚低下
c.右Horner症候群
d.右上下肢運動麻痺
e.右上下肢振動覚低下

正答の理由
突然の嗄声・嚥下障害、左上下肢の温痛覚低下、右延髄外側の拡散強調高信号から、右延髄外側梗塞〈Wallenberg症候群〉を考えます。延髄外側を下行する交感神経路が障害されると、病変と同じ右側に縮瞳・眼瞼下垂などのHorner症候群が生じます。顔面と上下肢の感覚障害は左右が交代することが特徴です。
画像の見方
横断像の画像左側に当たる右延髄外側に、限局した拡散強調高信号が見られます。突然の嚥下・構音障害と反対側の上下肢温痛覚低下を併せると、右延髄外側の急性虚血性病変に合います。ADC画像は提示されていないため、信号所見だけで拡散制限を定量的に断定しません。
各選択肢の検討
a.下小脳脚等の障害による運動失調は一般に病変と同じ右側に出ます。
b.三叉神経脊髄路・核の障害では病変と同じ右顔面の温痛覚が低下します。左上下肢の障害とは側が異なります。
c.正しい。右側の下行性交感神経路の障害で生じます。
d.錐体路は延髄の内側を走り、典型的な外側病変では上下肢の麻痺を伴いません。右上下肢麻痺は本例の局在に合いません。
e.振動覚を伝える内側毛帯は内側にあり、典型的な延髄外側症候群では保たれます。
覚えるポイント
延髄外側病変では同側の顔面感覚障害・Horner症候群と、対側の体幹四肢温痛覚障害。
関連する画像診断の解説
ワレンベルグ症候群(延髄外側梗塞)の症状とMRI画像診断(画像診断まとめ)で、画像所見と症例を確認できます。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。