第113回医師国家試験 F76(2019年)
正答:c
問題
70歳の男性。労作時の息切れを主訴に来院した。
現病歴:4年前に縦隔腫瘍に対し摘出手術が施行され、病理検査で軟部肉腫と診断された。2年前に肺転移に対して2か月間アドリアマイシンが投与され、その後病変の増大はない。1か月前から倦怠感があり、数日前から労作時の息切れを自覚するようになった。ここ3か月で3 kgの体重増加がある。
既往歴:45歳から高血圧症で内服加療。
生活歴:喫煙は20歳から33歳まで20本/日。飲酒は機会飲酒。
家族歴:母親は肺癌で死亡。
現症:意識は清明。身長172 cm、体重63 kg。体温36.5 ℃。脈拍80/分、整。血圧164/78 mmHg。呼吸数18/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。胸骨正中切開の手術瘢痕を認める。Ⅲ音を聴取し、心雑音を認めない。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢末梢に冷感を認めない。両側下腿に浮腫を認める。
検査所見:血液所見:赤血球399万、Hb 11.6 g/dL、Ht 38 %、白血球4,000、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白6.2 g/dL、アルブミン3.6 g/dL、AST 62 U/L、ALT 81 U/L、LD 251 U/L(基準176〜353)、尿素窒素14 mg/dL、クレアチニン0.6 mg/dL、血糖97 mg/dL、Na 142 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 108 mEq/L、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉696 pg/mL(基準18.4以下)、心筋トロポニンT 0.14(基準0.01以下)、CK-MB 5 U/L(基準20以下)。CRP 0.3 mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.4、PaCO2 38 Torr、PaO2 83 Torr、HCO3− 24 mEq/L。胸部エックス線写真で心胸郭比は3か月前に53 %、受診時58 %。心電図で高電位とV5、V6の軽度ST低下を認める。1年前の心エコー検査は正常である。今回の来院時の心エコー検査で左室はびまん性に壁運動が低下しており、左室駆出率は35 %。
心不全の薬物治療を続けるうえで継続的に評価する必要がないのはどれか。
a.体重
b.心拍数
c.CK-MB
d.左室駆出率
e.脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉
正答の理由
心不全の経過は、体液貯留を示す体重、心拍数・心調律、症状、心機能、ナトリウム利尿ペプチドなどを組み合わせて評価します。CK-MBは心筋傷害を調べる検査であり、安定した心不全の薬物治療効果を日常的に追う指標ではありません。左室駆出率やBNPも毎回一律に測定するという意味ではなく、病状や治療変更に応じて評価します。
各選択肢の検討
a.体液貯留や利尿による変化を追う指標です。本例にも3 kgの体重増加と下腿浮腫があります。
b.頻脈・徐脈、不整脈やβ遮断薬等の影響を確認します。
c.正しい(継続評価を通常必要としない項目)。新たな心筋傷害を疑う状況を除き、慢性心不全の治療効果判定のため定期的に測定する検査ではありません。
d.収縮機能と治療反応の評価に用います。再検の時期は症状変化や治療方針に応じて決めます。
e.心負荷の変化を知る補助指標です。腎機能などの影響もあるため症状・身体所見と合わせて解釈します。
覚えるポイント
心不全の経過観察では体液量・脈拍・心機能を追う。CK-MBの定期測定を治療目標にしない。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第113回医師国家試験問題および正答
- NICE NG106:慢性心不全の経過観察と薬物治療のモニタリング
- North West London Pathology:CKアイソザイムの臨床的意義
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。