第113回医師国家試験 D68(2019年)
正答:b・c
問題
60歳の女性。1か月前から37℃台の微熱があり、1週間前に頸部のしこりに気付いた。2日前から背部、前胸部に紅斑が出現し、38℃台の発熱、倦怠感が強くなり、食事摂取もできなくなったため家族に連れられて来院した。家族歴は、母親が血液疾患のため60歳で死亡。末梢血塗抹May-Giemsa染色標本(別冊No.32)を別に示す。
この患者が有していると考えられる疾患の原因ウイルスについて正しいのはどれか。2つ選べ。
a.抗ウイルス薬が有効である。
b.母乳感染によることが多い。
c.献血で発見されることがある。
d.妊娠中に感染すると児に聴力低下を高率に起こす。
e.妊娠中に感染が判明したら、出産後にガンマグロブリン注射を行う。

正答の理由
発熱、リンパ節腫大、皮膚病変と核の不整を示す異常リンパ球から成人T細胞白血病・リンパ腫〈ATL〉を疑い、原因となるHTLV-1について問う問題です。HTLV-1は母乳を介して母子感染し、献血時のスクリーニングで感染が判明することがあります。血液像だけで確定せず、抗体・遺伝子等の検査を組み合わせます。
画像の見方
中央のリンパ球には核輪郭の不整がみられます。病歴・リンパ節腫大・皮膚病変と合わせてATLを疑う材料としますが、この一枚だけで確定診断はできません。
各選択肢の検討
a.HTLV-1感染そのものを排除する標準的な抗ウイルス治療は確立していません。ATLの一部病型で用いられる抗ウイルス薬・インターフェロン併用等の専門治療とは区別します。
b.正しい。流行地域では長期間の母乳栄養を介した母子感染が重要な経路です。性交や感染血液による伝播もあります。
c.正しい。献血での抗体スクリーニング等を契機に判明することがあります。
d.先天性CMV感染などの論点であり、HTLV-1の代表的な胎児影響ではありません。
e.B型肝炎の母子感染予防と混同しています。HTLV-1の母子感染予防として出生後の免疫グロブリン注射を一律に行うものではありません。
覚えるポイント
HTLV-1は母乳・性交・血液で伝播し、ATLやHAM等を生じ得ます。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。