第112回医師国家試験 F77(2018年)
正答:e
問題
49歳の女性。意識障害のため救急車で搬入された。
現病歴:2か月前から夕方の買い物中にボーッとなって近くの医療機関を受診し点滴を受けて帰宅することが3回あった。Holter心電図で異常はなく、脳波検査と頭部CTとを受けたが結果はまだ聞いていないという。本日夜、自宅で倒れているのを見つけた夫が救急要請し、総合病院の救急外来に搬入された。
既往歴(夫からの情報):特記すべきことはない。月経はよく分からない。持参していた特定健診(3週間前受診)のデータ:Hb11.4g/dL、白血球3,100、血糖68mg/dL、Na132mEq/L。
生活歴:専業主婦。夫と2人暮らし。大学生の子ども2人とは別居。
家族歴:特記すべきことはない。
現症:閉眼したままで呼びかけには反応しないが、痛み刺激には反応がある。身長156cm。体重は測定不能だが、夫によると「少し痩せてきたかなぁ」という。脈拍76/分、整。血圧102/56mmHg。胸部や腹部に異常を認めない。手足は時折動かし、麻痺や弛緩は認めない。簡易測定した血糖値が35mg/dLであったので、20%ブドウ糖液20mLを静注したところ、3分後には呼びかけに応じ座位が取れるようになった。経過観察と精査を目的に入院になった。
追加情報(本人の意識回復後に聴取した内容):2回の出産後、月経は正常に戻ったが最近は少し不順気味である。魚油系のサプリメントを服用しているが常用薬はない。2年に1度、家族で海外旅行に行っており、直近は1年前にアメリカ西海岸を訪れた。犬を10年以上室内で飼っている。体重はこの1年で5kg減って48kgである。
その後の経過:ブドウ糖液静注後、意識障害は改善し再度の悪化を認めなかったため、翌朝まで維持液1,000mLを輸液しながら経過観察することにした。翌朝の診察時、意識状態は再度悪化し意思疎通が取れなくなっていた。バイタルサインは正常である。血液生化学所見:血糖82mg/dL、Na112mEq/L、K3.9mEq/L、Cl78mEq/L。CRP0.3mg/dL。動脈血ガス分析の結果は正常。緊急で行った頭部CTで異常を認めない。
輸液を見直すとともに、行うべき対応はどれか。
a.抗ウイルス薬を投与する。
b.サプリメントを中止させる。
c.甲状腺ホルモンを投与する。
d.20%ブドウ糖液を静注する。
e.副腎皮質ステロイドを投与する。
正答の理由
ACTH欠乏による続発性副腎不全を疑い、ヒドロコルチゾンなどの副腎皮質ステロイドを速やかに投与します。可能なら治療前にACTH・コルチゾールを採血しますが、採血結果を待って救命治療を遅らせません。重い意識障害を伴う低Na血症自体への緊急対応と、Naの過速補正を防ぐ頻回の測定も必要です。
各選択肢の検討
a.本例ではウイルス感染を示す所見がなく、優先する治療ではありません。
b.サプリメントの中止だけでは、副腎不全や重症低Na血症への治療になりません。
c.副腎不全を未治療のまま甲状腺ホルモンを開始すると、副腎クリーゼを誘発するおそれがあります。まず副腎系を補います。
d.現時点の血糖は82mg/dLです。ブドウ糖だけの追加では低Na血症とコルチゾール不足を解決しません。
e.正しい。副腎皮質ステロイドでコルチゾール不足を補います。輸液の種類・量とNa推移も見直します。
覚えるポイント
副腎不全が疑わしければ、甲状腺ホルモンより先に糖質コルチコイドを補う。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。