第112回医師国家試験 A64(2018年)
正答:a・b
問題
55歳の男性。胸痛を主訴に来院した。1週間前から左下の歯痛を自覚していた。痛みは徐々に増強し、3日前から痛みが頸部へ広がり、2日前に胸痛も出現したため受診した。
意識は清明。体温37.5℃。脈拍96/分、整。血圧98/62 mmHg。呼吸数24/分。右胸部で呼吸音が減弱している。
血液所見:赤血球482万、白血球14,500(桿状核好中球32%、分葉核好中球54%、単球5%、リンパ球9%)、血小板11万。
血液生化学所見:AST 61 U/L、ALT 69 U/L、尿素窒素27 mg/dL、クレアチニン1.2 mg/dL。CRP 36 mg/dL。縦隔条件の頸部CT(別冊No.31A)、胸部CT(別冊No.31B)及び矢状断再構成CT(別冊No.31C)を別に示す。
治療として適切なのはどれか。2つ選べ。
a.抗菌薬投与
b.ドレナージ
c.放射線治療
d.抗癌化学療法
e.副腎皮質ステロイド投与


正答の理由
歯痛から頸部痛、胸痛へ広がった経過と、頸部〜縦隔のガス・液体貯留から、歯性感染に続く降下性壊死性縦隔炎を考えます。好気性菌・嫌気性菌を含む広域抗菌薬と、感染腔・壊死組織の迅速なドレナージ・デブリードマンが必要です。抗菌薬だけで待機せず、気道確保、原因歯・頸部感染源、胸腔への波及も同時に評価します。
画像の見方
頸部の咽頭周囲にガスを伴う軟部組織変化があり、縦隔にも脂肪織の不明瞭化・液体貯留が広がっています。矢状断で頸部から胸部への連続性が分かり、右優位の胸水も認めます。
各選択肢の検討
a.正しい。重篤な多菌種感染を想定して速やかに静注治療を開始します。
b.正しい。感染源の除去と頸部・縦隔等の十分な排膿が重要です。
c.悪性腫瘍ではなく重症感染症の所見であり、放射線治療は行いません。
d.抗癌薬で治療する病態ではありません。
e.感染源制御に代わる初期治療ではなく、ステロイド単独投与は適切ではありません。
覚えるポイント
歯・咽頭の感染が頸部から縦隔へ下降したら、抗菌薬+緊急排膿。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。