第112回医師国家試験 A56(2018年)
正答:e
問題
35歳の男性。腰痛を主訴に来院した。約半年前から左陰囊の腫大を自覚していたが、特に受診はしていなかった。1か月前から腰痛が出現したため受診した。既往歴に特記すべきことはない。血液所見に異常を認めない。血液生化学所見:LD 1,672 U/L(基準176〜353)、hCG 1,962 mIU/mL(基準1.0以下)、α-フェトプロテイン〈AFP〉915 ng/mL(基準20以下)。来院時の陰囊の写真(別冊No.26A)、肺野条件の胸部CT(別冊No.26B)及び腹部造影CT(別冊No.26C)を別に示す。
この患者にまず行うべきなのはどれか。
a.CTガイド下肺生検
b.CTガイド下後腹膜リンパ節生検
c.左精巣水瘤切除術
d.左精巣生検
e.左高位精巣摘除術


正答の理由
左陰囊腫大、AFP・hCG・LD上昇、肺の多発結節と後腹膜の大きな腫瘤から、転移を伴う精巣胚細胞腫瘍を考えます。AFP高値は非セミノーマ成分を疑う所見です。原発巣を鼠径部から高位精巣摘除し、病理診断と局所治療を行うのが標準です。転移巣があっても、本例には摘除より先に化学療法を急ぐような生命危機の情報は示されていません。陰囊写真Aは公式に非公開であり、画像所見を推測で補いません。
画像の見方
胸部CTでは両肺に複数の円形結節があり、血行性転移を疑います。腹部CTでは大動脈周囲、とくに左側に大きな軟部腫瘤があり、精巣腫瘍の後腹膜リンパ節転移という分布に合います。別冊No.26Aの陰囊写真は公式非公開です。
各選択肢の検討
a.明らかな精巣原発を疑う状況では、肺転移候補の針生検より原発巣の高位精巣摘除を優先します。
b.後腹膜リンパ節転移を疑いますが、本例では精巣摘除で診断組織を得られます。
c.単なる水瘤では腫瘍マーカー上昇と肺・後腹膜の多発病変を説明できません。
d.悪性精巣腫瘍を疑うとき、経陰囊的な生検は腫瘍播種などの問題があるため通常の初手にしません。
e.正しい。鼠径部から精索を高位で処理して摘除し、組織診断を行います。
覚えるポイント
精巣悪性腫瘍を疑えば、通常は経陰囊生検ではなく鼠径部からの高位精巣摘除を行います。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。