第112回医師国家試験 A54(2018年)
正答:d
問題
32歳の男性。左大腿の腫瘤を主訴に来院した。3か月前に径6 cmの左大腿の腫瘤に気付き様子をみていたところ、増大して径10 cmとなったため受診した。これまでの健診で異常は指摘されていない。
意識は清明。身長172 cm、体重78 kg。体温36.3 ℃。脈拍72/分、整。血圧126/78 mmHg。胸腹部に異常を認めない。左大腿近位内側に弾性硬の腫瘤を触知するが、発赤、腫脹および圧痛はない。皮膚との可動性は良好だが、深部との可動性は不良である。血液生化学所見に異常を認めない。左大腿近位MRIのT1強調像(別冊No.24A)とT2強調像(別冊No.24B)とを別に示す。
最も可能性が高いのはどれか。
a.膿瘍
b.粉瘤
c.脂肪腫
d.悪性軟部腫瘍
e.ガングリオン


正答の理由
深部に固定した腫瘤が短期間に6 cmから10 cmへ増大しており、MRIでも脂肪そのものの信号とは異なる不均一な大きな腫瘤を認めます。悪性軟部腫瘍を最優先に疑います。痛みや血液検査異常がなくても否定できません。組織型はこの情報のみでは確定せず、専門施設で画像評価と適切に計画された生検を行います。
画像の見方
T1強調像では皮下脂肪のような高信号ではなく、筋内に大きな腫瘤があります。T2強調像では内部に強弱のある高信号が広がり、均一な単純囊胞や典型的脂肪腫とは異なります。MRIのみで肉腫の組織型までは決めません。
各選択肢の検討
a.感染を示す発熱や局所炎症所見に乏しく、増大する深部充実性腫瘤として悪性腫瘍の評価が優先されます。
b.通常は皮膚・皮下の病変です。本例は皮膚と可動性があり、深部に固定した大きな腫瘤です。
c.通常は皮下脂肪と同様にT1強調像で高信号を示します。本例の腫瘤はその典型像に合いません。
d.正しい。急速な増大、大きさ、深部局在、不均一なMRI信号が警告所見です。
e.関節や腱鞘に関連する囊胞性病変が典型です。この大きな深部不均一腫瘤の第一候補ではありません。
覚えるポイント
増大する大きな深部腫瘤は、無痛でも軟部肉腫を疑って専門評価につなぎます。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第112回医師国家試験問題および正答
- British Sarcoma Group:UK guidelines for the management of soft tissue sarcomas 2024
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。