第111回医師国家試験 H30(2017年)
正答:e
問題
82 歳の男性。腎盂腎炎の治療のため入院中である。セフェム系抗菌薬を1日3回(毎食後)内服していたが、尿所見の改善がみられたため、昨夜、担当医は看護師に対して、「明朝からの抗菌薬を中止してください」と口頭で指示を行った。担当医は口頭で指示を行ったことを翌朝、出勤してからカルテの経過記録に記載した。ところが朝の配薬を担当する看護師は抗菌薬を患者に渡してしまい、リーダー看護師が口頭指示に気付いたときには、すでに患者は抗菌薬を服用していた。リーダー看護師から連絡を受けて担当医が患者を確認した時点では明らかな副作用は認められなかった。担当医は指示が履行されなかったことを患者に説明し、引き続き副作用の観察について看護師に指示書を渡した。
次に行う対応として適切なのはどれか。
a.病室で看護師を注意する。
b.口頭指示に関する記録を削除する。
c.患者の血液を採取し検体を保存する。
d.院外の事故調査委員会に調査を依頼する。
e.医療安全管理部門にインシデントを報告する。
正答の理由
患者への説明と状態確認、観察指示を行った後は、医療安全管理部門にインシデントとして報告します。明らかな健康被害がなくても、中止指示の記録・共有・確認の過程を検討し、再発を防ぐ必要があります。個人を責めるだけでなく、口頭指示を減らす仕組みや復唱・記録、配薬時の確認を見直します。
各選択肢の検討
a.誤り。病室での叱責はプライバシーや報告文化を損ない、原因分析と再発防止の代わりにはなりません。
b.誤り。事実の記録は保持します。必要な訂正は経緯が分かるように行い、都合の悪い記録を消してはいけません。
c.誤り。特定の検査・保存が必要な臨床的根拠は示されていません。状態に応じた観察や検査は別途判断します。
d.誤り。まず院内で報告・検討する事例で、直ちに外部の事故調査委員会へ調査を依頼する状況ではありません。
e.正しい。医療安全管理部門へ報告し、口頭指示から配薬までのどこで情報が途切れたかを検証します。
覚えるポイント
健康被害がなくても誤投薬を報告し、伝達と確認の仕組みを改善する。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第111回医師国家試験問題および正答
- AHRQ PSNet:Reporting Patient Safety Events
- CMS:AHRQ Common Formats—有害/無害事象の報告
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。