第111回医師国家試験 H25(2017年)
正答:d
問題
70 歳の男性。息苦しさを主訴に来院した。1か月前から農作業の途中で息切れを自覚するようになり、1週間前から就寝中に息苦しさで目が覚め、しばらく座っていると呼吸が楽になることが何度かあった。2日前から就寝中の息苦しさが増悪するため受診した。意識は清明。体温 36.5 °C。脈拍 88/分、整。血圧 112/90 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 94 %(room air)。頸静脈の怒張を認めない。胸部の聴診でII音の奇異性分裂、III音およびIV音を認め、胸骨右縁第2肋間を最強点とするIV/VIの収縮期駆出性雑音を聴取し、頸部への放散を認める。両側の下胸部に吸気時の coarse crackles を聴取する。下腿に軽度の浮腫を認める。
この患者で予想される所見はどれか。
a.脈圧の開大
b.大腿静脈の怒張
c.脈波伝達速度の亢進
d.頸動脈波の鈍い立ち上がり
e.足関節上腕血圧比〈ABI〉の低下
正答の理由
右第2肋間を最強点として頸部に放散する駆出性収縮期雑音、Ⅱ音の奇異性分裂、労作時息切れと起坐呼吸から、大動脈弁狭窄症に伴う心不全を考えます。狭い弁口からの駆出に時間を要し、頸動脈波は立ち上がりが遅くなります。
各選択肢の検討
a.誤り。脈圧開大は大動脈弁逆流などでみられます。本例の脈圧は112−90=22mmHgで狭くなっています。
b.誤り。大腿静脈の怒張は大動脈弁狭窄の特徴的所見ではありません。静脈のうっ血所見は右心系なども評価します。
c.誤り。脈波伝達速度は主に動脈の硬さなどの指標です。弁口からの駆出遅延と同じ概念ではなく、本例から亢進を予測する肢ではありません。
d.正しい。大動脈弁狭窄では頸動脈の立ち上がりが遅い遅脈が典型です。
e.誤り。ABI低下は下肢動脈の狭窄・閉塞などを示唆し、大動脈弁狭窄そのものの典型所見ではありません。
覚えるポイント
頸部へ放散する駆出性雑音と、鈍い頸動脈波の立ち上がりを結び付ける。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。