第111回医師国家試験 G61(2017年)
正答:b
問題
34歳の女性。腹痛、下痢および発熱を主訴に来院した。
現病歴:2日前に夫婦で焼き鳥と鳥刺しを食べた。昨日深夜に腹痛と悪寒とで目を覚まし、トイレに駆け込んだところ水様下痢であった。朝までに5、6回の水様下痢と1回の嘔吐があり、夫に連れられて受診した。夫は下腹部痛はあるが、下痢はない。
既往歴:4歳時に肺炎。
生活歴:会社員。33歳の夫との2人暮らし。ペットは飼っていない。海外渡航歴はない。
家族歴:父親が高血圧症。母親が糖尿病。
現症:意識は清明。身長155 cm、体重48 kg。体温37.8 ℃。脈拍112/分、整。血圧102/68 mmHg。呼吸数18/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内と皮膚は乾燥している。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、全体に軽度の圧痛を認めるが反跳痛はない。肝・脾を触知しない。皮疹を認めない。
検査所見:尿所見:比重1.031、蛋白(±)、糖(-)、ケトン体2+、潜血(-)。便所見:外観は淡黄色水様。血液の付着はない。血液所見:赤血球452万、Hb 13.1 g/dL、Ht 40 %、白血球10,300(好中球81 %、好酸球2 %、好塩基球0 %、単球1 %、リンパ球16 %)、血小板32万。血液生化学所見:総蛋白8.0 g/dL、アルブミン4.1 g/dL、総ビリルビン1.0 mg/dL、AST 10 U/L、ALT 16 U/L、LD 289 U/L(基準176〜353)、ALP 215 U/L(基準115〜359)、γ-GTP 14 U/L(基準8〜50)、アミラーゼ55 U/L(基準37〜160)、CK 50 U/L(基準30〜140)、尿素窒素22 mg/dL、クレアチニン0.7 mg/dL、尿酸4.2 mg/dL、血糖82 mg/dL、Na 133 mEq/L、K 3.0 mEq/L、Cl 95 mEq/L。CRP 4.5 mg/dL。
脱水と判断し、直ちに生理食塩液の急速輸液を開始した。
次に行うべき検査はどれか。
a.便潜血検査
b.便培養検査
c.便脂肪染色
d.便中ロタウイルス抗原検査
e.便中Clostridium difficile抗原検査
正答の理由
鳥刺しの摂取後に腹痛・下痢・発熱を生じ、カンピロバクターなどの細菌性腸炎を疑います。輸液による脱水への対応に続き、原因菌を調べる便培養検査を行います。血便がないことだけでは細菌性腸炎を除外できません。現在は核酸検出など培養以外の検査もありますが、本問の選択肢では便培養が適切です。
各選択肢の検討
a.誤り。出血の検出はできますが、原因菌を同定する検査ではありません。
b.正しい。便からカンピロバクターなどの病原細菌を検出し、原因の特定につなげます。
c.誤り。脂肪の消化・吸収障害を評価する検査で、この急性発熱性下痢の原因検索の第一選択ではありません。
d.誤り。成人でも感染はあり得ますが、今回の鳥刺し曝露からは細菌性腸炎の検査を優先します。
e.誤り。抗菌薬曝露などの背景が示されておらず、鳥刺し摂取後の急性腸炎では優先しません。抗原検査だけで活動性感染を確定するものでもありません。
覚えるポイント
生・加熱不十分の鶏肉後の下痢ではカンピロバクターを考え、便の病原体検査を行う。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。