第111回医師国家試験 E61(2017年)
正答:c
問題
20歳の男性。発熱と右下肢の発赤、疼痛および腫脹とを主訴に来院した。
現病歴:4日前、屋外でバスケットボールの練習中に転倒し右下腿を打撲した。次第に打撲した部位の発赤、疼痛および腫脹が出現して急速に拡がり、発熱も出現したため救急外来を受診した。
既往歴:3歳時に肺炎で入院。薬物アレルギーはない。
生活歴:大学生。バスケットボールのサークルに所属している。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:父親が高血圧症で内服治療中。母親は健康。
現症:意識レベルはJCSⅠ-2-R。身長175cm、体重63kg。体温40.6℃。脈拍120/分、整。血圧82/40mmHg。呼吸数22/分。SpO2 96%(room air)。全身に発汗を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。右鼠径部に径2cmで可動性良好なリンパ節を3個触知し、圧痛を認める。右下腿は打撲部位を中心に膝から足首に及ぶ著明な発赤、腫脹および圧痛を認め、皮膚表面には大小の血性水疱を認める。右膝関節および足関節は腫脹と疼痛のため十分な診察ができない。足背動脈は両側とも触知可能である。
検査所見:血液所見:赤血球468万、Hb 13.9g/dL、Ht 42%、白血球15,300(桿状核好中球30%、分葉核好中球55%、好酸球1%、好塩基球0%、単球7%、リンパ球7%)、血小板9万、PT-INR 1.6(基準0.9〜1.1)、Dダイマー3.4μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 114U/L、ALT 30U/L、LD 602U/L(基準176〜353)、CK 12,200U/L(基準30〜140)、尿素窒素30mg/dL、クレアチニン1.9mg/dL、血糖98mg/dL、Na 134mEq/L、K 5.0mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 22mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.30、PaCO2 32Torr、PaO2 70Torr、HCO3− 14mEq/L。骨盤部・下肢CTで右膝関節周囲から足部にかけての皮下組織と筋肉の強い浮腫像と、下腿の筋肉表面に沿った広範な液体成分の貯留像とを認める。
最も優先して行うべきなのはどれか。
a.高圧酸素療法
b.右膝関節穿刺
c.右下肢デブリドマン
d.副腎皮質ステロイド投与
e.破傷風ガンマグロブリン投与
正答の理由
急速に進む疼痛・腫脹と血性水疱、筋膜に沿う液体貯留、CK高値、ショックは壊死性軟部組織感染症を強く疑う所見です。壊死組織を速やかに除去するデブリドマンを優先します。輸液・抗菌薬などの全身管理を並行し、外科的感染源制御を遅らせません。
各選択肢の検討
a.誤り。補助療法が検討される場合はありますが、緊急手術や抗菌薬投与を遅らせる理由にはしません。
b.誤り。化膿性関節炎だけでは広範な筋膜病変・血性水疱を説明しにくく、穿刺で手術を遅らせません。
c.正しい。壊死した組織の除去による感染源制御を速やかに行います。
d.誤り。昇圧薬依存性ショックなどで検討されることはありますが、感染源である壊死組織の除去に代わりません。
e.誤り。破傷風の病態を示す所見ではありません。外傷後予防の適否と、今回の緊急感染源制御は別に判断します。
覚えるポイント
壊死性軟部組織感染症は抗菌薬と迅速な外科的除去。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。