第111回医師国家試験 A45(2017年)
正答:a
問題
72歳の女性。右手が使いにくいことを主訴に来院した。3年前から料理のときに右手で炒めものをかき混ぜづらく、歩行時に右足を引きずると感じていたが、症状の進行は自覚しなかった。半年前、物を持って平地を歩いているときに小走りになって転倒した。そのころから徐々に右足の引きずりが強くなっているように感じている。10年前から便秘で5年前から嗅覚の低下を自覚している。3年前に夫と死別してから抑うつ傾向となり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉を服用している。半年前に娘と旅行をしたとき、睡眠中に寝言を言いながら手足をバタバタさせていたという。表情は乏しいが、眼球運動は正常で眼振は認めない。右優位の筋強剛と無動を認めるが、振戦を認めない。四肢の腱反射は正常で、Babinski徴候は認めない。ドパミントランスポーターSPECT(別冊No.19)を別に示す。
最も考えられるのはどれか。
a.Parkinson病
b.正常圧水頭症
c.多系統萎縮症
d.進行性核上性麻痺
e.薬剤性Parkinson症候群

正答の理由
右優位の無動と筋強剛、歩行時の小走りに加え、便秘、嗅覚低下、睡眠中の異常行動がありParkinson病を考えます。DAT-SPECTの線条体集積低下も黒質線条体ドパミン神経の障害を支持します。振戦がなくても否定できず、画像だけで多系統萎縮症などと区別することはできません。 SSRIの種類によってはDAT集積自体にも影響し得るため、服薬を確認して画像を解釈します。
画像の見方
線条体集積に左右差があり、後方の被殻に相当する部位の集積低下が目立ちます。ドパミン神経障害を支持しますが、DAT像だけで疾患を確定しません。
各選択肢の検討
a.正しい。左右差のある無動・筋強剛と非運動症状の組合せが最も整合します。
b.歩行障害に認知機能障害や排尿障害・脳室拡大などを併せて評価しますが、本例の片側優位の症候からはaを優先します。
c.自律神経障害や小脳症状などが鑑別の手掛かりです。DAT低下だけでは除外できませんが、提示された臨床像ではaが最も考えられます。
d.垂直性眼球運動障害や早期の姿勢保持障害などが手掛かりです。本例では眼球運動が正常で、強い左右差などからaを優先します。
e.SSRI服用だけで薬剤性と断定しません。SSRIは睡眠中の異常行動に影響する場合もありますが、非運動症状の先行とDAT低下を含む全体像はParkinson病を支持します。
覚えるポイント
Parkinson病は振戦がなくても成立し、左右差と非運動症状が診断の手掛かりになる。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。